01 最底辺のクラス
つつがなく振り分け試験は終了し、数日が経過し、僕は晴れて高校2年生になった。
まだ肌寒さの残る早朝の通学路をのんびりと歩く。
しばらくすると校門が見えてきた。中に入ると筋骨隆々の教師が立っていた。
「おはようございます。鉄人先生」
「ああ、空凪か。挨拶は結構だがその呼び方は止めろ」
「別にいいじゃないですか。これほど似合う愛称はそうそうありませんよ?」
僕の目の前に居る教師の本名は『西村宗一』だ。
本校における補習や生活指導を担当しており、一部の生徒からはそれはもう恐れられている。
ただ、決して筋の曲がった事はしない先生だ。教師陣の中で一番信用できる相手と言っても過言ではない。
「で、こんな時間にこんな所でどうしたんですか? 散歩ですか?」
「何が悲しくて学校内で散歩せにゃならん。
ほら、コレだ」
「?」
鉄人に指し示された場所に視線を向けるとフタの開いたダンボール箱と、その中に詰め込まれた多数の封筒が見えた。
「これは?」
「振り分け試験の結果通知だ。
こうやって俺が生徒1人1人に手渡ししているというわけだ」
「面倒なシステムですね。掲示板に張り出すとかじゃダメだったんですか?」
「うちは注目されている試験校だからな。色々と変わった方法を採らなければならないらしい。
この発表方法もその一環だな」
この口ぶりだと他にも面倒なルールが多数あるんだろうな。僕には関係ないが。
まぁ、そんな事はどうでもいい。鉄人から渡された封筒を……開こうとしたら糊付けが意外と硬かったので端っこの方を破いて開く。
中から現れたのは真っ白な紙の真ん中に僅かな文字が印字されているだけのシンプルなものだった。
空凪 光 …… Aクラス
「……あの、鉄人?」
「どうした?」
「これ、妹のです」
「……すまない。ちょっと待ってくれ」
僕から指摘を受けた鉄人はゴソゴソとダンボール箱を探っている。
うちの学校の2年生は300人だったはずだ。僕が恐らく1番乗りなので箱の中の封筒の数はほぼ300と見て問題ないだろう。
それだけの量があるなら、間違えるのも無理は無いか?
「あったあった。これだ」
「……」
封筒の隅っこに書いてある自分の名前を確認してから先ほどと同じように封筒の端を破く。
空凪 剣 …… Fクラス
間違いなく僕への通知だな。
「ところで、1つだけ訊いておきたい事がある」
「何でしょうか?」
「お前の体質の事はある程度把握しているが、上手くやればお前ならもう少し上のクラスを狙えたんじゃないか?」
「まぁ、そうでしょうね。
でもいいんです。Fクラス行ってあいつらとつるむ方が面白そうだったんで」
「はぁ、本人がそういうなら構わん。
ただ、問題は起こしてくれるなよ?」
「さーどーでしょーねー」
「そうだったな。今更言った所で変わらんか。
まあいい。しっかりと勉学に励めよ!」
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