03 集った才能
雄二の宣言を聞いたクラスの連中の反応はとても分かりやすいものだった。
『勝てるわけが無い!』
『これ以上設備を落とされたらたまらない!』
『姫路さんさえ居れば後は何も要らない!』
……実に、否定的だ。
前提知識の無い者でも概ね察しは付くと思うが、雄二が宣言した『試験召喚戦争』、通称『試召戦争』とはクラスの設備を賭けた戦いの事だ。
別のクラスへと勝負を挑み、勝てばそのクラスの設備を丸ごと入手でき、負ければ逆に設備のランクが落とされる。
そしてその勝負の内容とは『召喚獣』とかいうファンタジー色溢れる代物だ。
各生徒は自分の試験の点数に比例した強さを持つ召喚獣を使役し、互いに戦わせる。
そして、相手の代表を撃破すれば勝利というシンプルなルールだ。
当然ながら、召喚獣の強い方が有利、すなわち学力が高い者が有利だ。最低辺のクラスであるFクラスになど勝ち目はまず存在しないように思える。
「いや、そんな事は無い! 必ず勝たせてみせる!!」
だが、上位クラスはあくまでも有利であるだけだ。勝つ事は決して不可能というわけではない。
「いいか? このクラスには勝てる要素が揃っている。
それをお前らに一つ一つ説明してやる」
まぁ、雄二のお手並み拝見といこう。
ここに居るバカ供を乗り気にさせられないようであれば、戦争に勝つなど夢のまた夢だからな。
「そうだな、まずは……木下秀吉が居る!」
「む、ワシか?」
『おお! あいつは確か演劇部のホープ!』
『木下優子の双子の妹!!』
「ワシは弟じゃ!! 誰じゃ今のは!!」
秀吉だと? う~む、言い方は悪いがそこまで戦力になるのか?
双子の姉である木下優子は順位1桁の常連だが、その弟は普通にFクラスレベルだ。
いやまぁ、FクラスレベルでないFクラス生なんてほぼ皆無なんだが。
演劇の技術は試召戦争で役に立てられる機会は……皆無とは言わないが、ほぼ無い。
……まぁ、正真正銘のバカの集まりの中では比較的まともだし、見た目も良いから司令塔というかアイドル的な意味で役には立ってくれるか。
少々キツい言い方になってしまったが、要約すると比較的優秀だが飛び抜けて優秀ではないといった所か。
「土屋康太が居る!」
『土屋? 誰だ?』
「そうかそうか。そっちの名は知られていないか。
では、寡黙なる性識者の名を知らない者は居るか?」
『な、何だと!? 奴がそうだと言うのか!?』
「ち、違う!!(ブンブンブンブン!!)」
必死に首を振っている土屋康太。そう、彼こそがムッツリーニである。
その名は主に男子の間で神のように崇められている。そう、女子生徒の写真の販売者として。
盗聴、盗撮と言った犯罪そのものの行為にも精通しているが、商品のラインナップは至って健全である。
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