08 勝利条件
「流石にそろそろキツくなってきたか」
フィールド:化学
Fクラス 空凪 剣 23点
乱戦状態にあって無傷で立ち回るのは今の僕には不可能だ。
少しずつ、少しずつ削られて今に至る。
可能なら科目を変更して対応したいが、別の先生を呼ぶという事は戦線の拡大に繋がる。
雰囲気やら何やらで頑張ってごまかしてはいるが、それでもFクラスとDクラスには確かな地力の差が存在する。戦線の拡大は自らの首を締める行為に等しい。
「おーい副代表、今話せるか?」
「…………一旦フィールドを抜ける」
戦場は一旦別の誰かに任せて離脱する。
フィールドから脱出してから話を聞く。
「何だ?」
「さっき伝令があった。どうやら奴さんは数学の木内先生を連れ出したらしい」
「木内先生? 確か採点が速い先生だったな?」
「そ」
試験という物は採点されて初めて価値が出る。まぁ、当然の事だな。
で、これも当然だが、採点スピードというものは先生によって個性が出る。ついでに採点の辛さ、甘さとかもな。
採点が速いという事は大人数の点数を比較的速い時間で補充する事が可能だ。短期決戦に持ち込みたいなら相性最高だ。
そしてもう一つ。『数学の教師』を連れ出した事も重要だ。
今のフィールドは化学。数学を補充しても意味は無い。
ではどういう事かと言うと……話は単純で、数学フィールドを追加しようとしているという事だな。
う~む、どうしたもんかなぁ……
「ちなみに、雄二は戦況を把握してるのか?」
「多分な。斥候だってオレらみたいな前線部隊じゃなくて本陣に真っ先に情報を送るだろうし」
「ふむ……まぁ、丁度いいか。
ちょっとひとっ走り本陣まで行って、あっちの情報を確認してくる」
「りょーかい。早く戻ってきてくれよ。
副代表が居るのと居ないのとじゃ安定感が段違いだからな」
「努力はしよう。じゃあな」
無事にFクラスまで退避し、相変わらず教壇の上で偉そうにしている雄二に話しかける。
「おっす雄二。戦況は把握できてるか?」
「ん? 戻ってきたのか。
ああ。まぁ大体は把握している。
数学教師が呼び出されて戦線が拡大しそうな状態だろ?」
「まぁそりゃ把握してるか」
「ああ。数学の木内と船越が呼ばれた所まで把握している」
「……僕より詳しいな。木内先生の情報までしか把握してなかったよ。
で、対策はしてあるのか?」
「ああ、勿論だ。
丁度今須川に放送室に向かわせ……」
ピ~ンポ~ンパ~ンポ~ン
『船越先生、船越先生』
丁度いいタイミングで須川の声が聞こえてきた。
放送……という事は偽情報でも流すつもりか。
『2年Fクラスの吉井明久くんが体育館裏で待っています』
……うん?
『生徒と教師の垣根を越えた大事な話があるそうです』
………………えっと……脳内辞書では……
船越先生 (45歳♀独身)
婚期を逃し、ついには単位を盾に生徒に交際を迫ったとか何とか……
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