嫉妬
一瞬の間に5回突いた斬撃は木々を軽々と粉砕していく。それを隊服を裂きながらも躱し、その鬼の胴体を半分に斬った瞬間、その下半身から新たな鬼が構成されていく。
(場所は問わず斬ったら増えるのか!)
新たに現れた鬼に対処しようとした瞬間、錫杖鬼を蹴飛ばした方面からカカカっと声がした。ふと見た瞬間聞いたことのない高音が自分の耳を襲った。
「…っ!?」
音が聞こえず、視界がチカチカしながらも牽制の技を放とうとした瞬間、ひゅうと風が体を撫でた。
その直後、強い衝撃を上から受けて地面へと叩きつけられる。
「…がはっ!?」
「柱か!久方ぶりじゃのう、楽しませてくれ!」
大きな葉のような団扇を仰いだのだと気づいたのは槍の攻撃をギリギリでかすり傷を負いながら回避した後だった。
(…この鬼たち、一体一体が強力な血鬼術を持っている…)
斬っても死なない、斬れば増える、血鬼術は別々でさらに強力なものばかり。
(…今までの柱がやられるわけですね……。)
どう攻めるか考えていると後ろから声が聞こえた。
「磯島さん!加勢します!!」
大竹雫だ。
しかし援軍のはずなのに僕は彼女を未だに拒んだ。
自分でもなぜここまで拒絶しているのか理解ができない。ただただ頭にあるのはお館様の優しい微笑みだけ。
それを言えば彼女は戸惑いながらも共同戦をしようと言ってきてくれるが、口が止まらなかった。
「この戦いで上弦を討ち取って、僕は、僕が、優秀だと証明する!!」
《葉の呼吸 弐ノ型 葉針》
深緑に近い色の日輪刀から繰り出された技は、細長く鋭い斬撃を生み出し、四体同時に鬼の体を斬りつけた。
鬼が怯んでる間に更に接近し、低めの姿勢から技を繰り出しす。
《葉の呼吸 伍ノ型 葉蔓斬》
蔓のようにうねりながら鬼の体に巻きつき、そこから斬り刻む斬撃。複数の標的には有効な技だ。
その瞬間、葉蔓斬を右腕を切られるのみで躱した鬼が錫杖を地面に叩きつけた。
「腹立たしい!!」
その刹那、辺り一面に雷が無差別にひろがる。
「腹立たしいのは、こっちです!! 」
《葉の呼吸 参ノ型 矢じり葉》
なんども防いできた鋭い一撃で雷自体を斬ると、頸を斬りにかかる。
《葉の呼吸 陸ノ型 秋紅葉》
葉の呼吸で一番威力のある技が決まり、最後の鬼の頸がおちる。
斬っても増える鬼、だがそれはもとは同じ鬼だ。同時に全ての頸が落ちれば勝ちは有ると判断した。
構えを解いたその時、カカッと誰かの笑い声がした
「磯島さん!後ろ!!」
その刹那、鼓膜が破れそうになるほどの高音が頭の中を暴れまわった。
「………ッ!!」
(…油断、したっ!)
「頸を斬られた、腹立たしい、まったく、油断してるからこうなるのだ!」
錫杖を地面に叩きつけると先ほどよりも威力の上がった雷が自分へと向かってくる。
(…避けれない!)
やられると目を閉じた瞬間、そこから離れた地面へと瞬きをする間もなく降ろされた。
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