二十話
『大赦』からメールをもらって数日後。
学校も休みである土日の間に私は朝早くに『大赦』の元に足を運んでいた。
「──失礼します」
指定されたとある施設の一室。ノックをして室内に入ると中に居たのはあの時東郷さんを連れていってしまった例の装束に身を包んだ人が一人、椅子に座って待っていた。
(あの人は神官。それも位の高い人……)
そのっちさんから受け取った資料は、大赦内部に関する情報だ。組織内の関係性やそれに基づく相関図等々。根深いものではないけれどこの一ヶ月は何も無為に行動していたわけではない。動くにしても何にしても『大赦』に関しては必要になってくる情報だった。
私の姿を捉えるや立ち上がって深々と頭を下げる神官は、入室するように促してくる。
警戒をしつつ私は案内された椅子に腰掛けるとその人も対面に腰掛けて座った。
『御足労頂き感謝致します。結城友奈様。私は三好春信と申します』
仮面越しなので少し声が籠っているが、名と声からして男性のようだ。それにしても彼の名字が少し気にかかったが今は置いておこう。
私は「いえ…」と一言返してさっそく話を切り込む。
「連絡、ありがとうございました。それで例の件についてなんですけど……いかがでしたか?」
『一月ほど前…東郷美森様が大赦内部の手の者によって攫われた、と報告は頂いています。では、まずはそれについての回答を──こちらでも精査致しましたがやはり該当する者は確認できませんでした』
「なっ!? そ、そんなはずはありません! 確かに『大赦』の人間が私たちの目の前に現れて東郷さんを……っ?!」
『落ち着いてください。私としても貴方様を疑っているわけではないのです。乃木様や夏凜様からの申し立てもあるので、こうして御時間を頂いております……私事ですがお尋ねしても?』
「なんでしょうか…?」
『当時の状況を伺いたいのです。東郷美森様がいなくなったその日、彼女は我々によって拘束などの強行手段を用いて確保されたのか、あるいは自発的に我々についていったのか……知り得る情報を教えていただきたい』
彼の問いかけに私は記憶を巡らせる。『大赦』の人は私たちの前に何の前触れもなく現れたが、強行なのかと言われれば素直に肯定できる状況ではなかった……と思う。むしろあの時の東郷さんの様子からではまるで来るのが分かっていたようにも捉えられる。どちらかと言えば後者の方の印象が強い。
そのことを私は目の前の神官に伝える。
『…………なるほど。そうなるとこの辺りに執り行われた『儀式』が関係しているのかもしれませんね』
「儀式っていうと祈願や祈祷とかのアレですか?」
『私共の行う儀式は神樹様に由来しているものが殆どになります……近日では奉火祭が行われました』
「──奉火祭」
『正確には贄を捧げて天に赦しを乞うものですが、はて……?』
「どうしたんですか?」
『……いえ。検閲云々はこちらの話ですね。しかしこうなると対処が難しいと思われます』
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