大切な友達
周りを見ても人、人……。人々が何人もいる。
ニ乃に任せろって大声で言ったはいいものの……。この人混みの中で四つ子を探すのは至難の業だ。あいつらの連絡先でも聞いておけば良かったな。一応、四葉は輪投げ屋に居る事は分かっている。
だとすれば、四葉と合流するべきか。いや、その前に上杉に電話して他の皆と合流するよう呼びかけるか。頼むから、出てくれよ……。
『空か、どうした?』
何回もコールを待ちながらもようやく上杉が出る。
「実は今他の皆を探しているんだ。お前今、三玖といるんだろ?」
『ああ、そうだが……?ただ、訳あって三玖は足を怪我してるみたいなんだ』
慣れない下駄を履いているせいか。しょうがない、三玖の怪我が心配だし上杉にはとりあえず三玖と一緒に居てもらおうその方が安全だ。それに、二乃から引き受けた以上俺がやるしかない。
「分かった。そういえば、上杉。お前他の奴らは見たか?」
『五つ子か?さっき一花と会ったんだが……なんか髭のおっさんと居たぞ』
ひ、髭のおっさん……?特徴的な髭をしているのならまだしも、髭を生やしているおっさんなんていっぱいいるぞ。一花の奴もなんでそんな髭のおっさんといるんだ……?意味が分からんが、とりあえずそいつを探すのも悪くない手だ。
『後、三玖が前に髭のおっさんの車から出てくるところを見たって言ってたぞ』
どうやら、その髭のおっさんって言う奴が鍵を握っているのは間違いないようだ。聞く限りでは、怪しい関係っぽそうだが、それは流石にないはずだ。一花のことは、あんまり俺は知らないがそんなことをするような奴ではないと俺は思っている。
そんなことを考えていると、人混みが更に酷くなる。くそっ、こんな状況じゃ一花を探すなんて無理だぞ。しかし、そんなとき誰かが俺の手を掴む。
「誰だ……!?」
睨むようにして掴んだ相手を見ると、そこには……。
「……一花!?」
暗い路地裏に連れて来られそこにいたのは、いつものショートヘアの一花であった。だけど、いつものように揶揄うような表情をしていない。至って真面目だ。なにかあったのか……。
「ソラ君、みんなに伝えて欲しいことがあるの」
上杉が「一花!?」と言っている声が、聞こえたが繋がっていた電話を切られ、俺に携帯を返した後に言う。
伝えて欲しいこと……?
「花火見れないんだ」
その言葉は花火の爆音と共に聞こえ、周りを一旦更に暗くなったような感覚があった。なにより、一花の表情が何かを決心したかのような強い意志を感じさせている。
「見れないってどういうことだよ。お前らにとって、花火って大事なものだったんじゃないのかよ?」
二乃はあんなにも花火を楽しみにしていたし、三玖もああ言っていた。なにより、五つ子全員この花火大会を楽しみにしているような感じだった。なのに、何故一花は……。
「知ってるんだ、そのこと……。三玖が話したのかな?だけど私には今やりたいことがあるの」
「やりたいことってなんだよ?」
一花が今どうしてもやりたいこと……?いったい、それはなんなんだろうと思った俺は一旦冷静になり一花に聞く。
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