日常のようなもの 7
魔法とは何か。
魔法使いとなる前、後に師匠となる人物に一番初めに聞かれた質問がそれだった。
神秘的な力? 奇跡の結晶?
どれもウンとこない。
だから正直に答えた。
知ってるけど知らない、凄い力と。
では、魔法を何の為に習得しようとしている?
そんなものは決まっている。今度は間を空けず答えれた。
魔王を倒すため。と。
俺の即答に師匠は大層満足したのか、豪快に笑いを飛ばし、俺はその日のうちに正式な弟子となった。
◆
駅前のショッピングモール。
すなわち人の魔窟である。
いついかなる時でも混んでいて空いている時など殆どない。
ただでさえ見た目が派手で注目を集めやすい俺たち転生者からしたら決して行きたくない場所ランキング上位に入る場所。万が一訪れるとしたら当然フード付きの服は必須である。
何を買うかまでは聞いてないが、黒髪剣士の行きたいところはそんなショッピングモールに存在しているらしかった。
軽はずみに空いてるなんて言わなければよかった。
パーカーを軽く抑えながら、緑髪の後に続く。
銀髪小人は今日は赤髪吸血鬼の所に行く予定があったらしく来ておらず。黒髪剣士とはショッピングモールに着いた辺りで一旦別れた。
職場の先輩が居たらしい。挨拶に行くとか何とか。
俺たちのが先約なのに、なんて言葉は言わない。職場における上下関係の厳しさを知っているからだ。
ーーあぁ……働きたくなってきた。末期かなぁ。
…ところで。
「…緑髪……」
「? はい、なんですか?」
キョトンとした顔で振り返る緑髪に、俺は目立たない程度の声で言った。
「お前…何でフード外してるんだ……」
今日の緑髪の服は俺と同じフード付きパーカーの色違いである。
この服は大きめのフードが特徴で長い髪も隠すことができるのだが、緑髪はフードを外していた。
おかげで派手な緑髪は人目を引きつけ、同じ服で一緒に歩いている俺にまで視線が突き刺さる。
しかし、緑髪は何も気にした様子を見せず、逆に不思議そうに首を傾げた。
「だってフードしてたら髪ボサボサになっちゃうじゃないですか。むしろ何でフードしてるんですか」
「目立つからだよ」
「フードしてても目立つと思いますけど…現に目立ってますし」
「お前のせいでな」
ええー…とぼやく緑髪に、俺は頭を抑えた。
そうだ、緑髪はこういう奴だった。
パーカー着て来たからって隠す意志があると思い込んでいた俺が馬鹿だったんだ。
「ちなみに聞くけど髪を隠す気ないなら何でそのパーカー着てきたんだ」
「? ソラさんとペアルックですよ? 着ないわけがないじゃないですか」
「あぁ、そう…」
早く黒髪剣士戻ってこないかな。
適当に合流する、と言っていた黒髪剣士のことを思い出す。集合場所は決めてないが、身体能力に優れた黒髪剣士のことだ。先輩と別れ次第すぐに駆けつけてくれることだろう、多分。
「じゃあソラさん! 次はゲーセンに行きましょう! 私ゲーセン初めてなんです」
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