ハーメルン
理想の聖女? 残念、偽聖女でした!(旧題:偽聖女クソオブザイヤー)
第二話 (偽)聖女エルリーゼ
いやー……マジでガン萎えですよこいつは。
俺は自分がエテルナではなく、偽聖女のエルリーゼの方になっていた事を知って、割と本気でやる気がなくなっていた。
いやもう、うん。もう終わっていいよこの夢。
はいお終い、終了。解散。シャットダウン。
諦めたのでここで試合終了です。安西先生、バスケしたくありません。
なんでよりにもよってクソ偽聖女なんだよ。そりゃま中身が俺ってのはある意味外と中が釣り合ってると言えるかもしれないけどさ。
少なくとも本物のエテルナを乗っ取るよりは罪悪感はない。
てゆーかこいつなら身体返さなくていいわ。
エルリーゼが元に戻ったらクソの限りを尽くすわけだし、これならむしろ返さず自殺したるわ。
しかし……これ本当に夢なのかね。
何かさっきから全然覚める気配ないんだけど。朝食普通に美味しかったし、むしろ時間が経つほどお目目パッチリで現実感が増していくんだけど。
「エルリーゼ様、本日のお勉強の時間です」
「あ、はい。よろしくお願いします」
とりあえず勉強を教えに来たというおばさんに敬語で対応しておく。
口調は普段の男口調じゃ流石に何事かと思われそうなので、バイトの時と同じく敬語だ。
ちなみに女言葉とか絶対無理ね。自分でやってて吐き気するから。
というか当たり前のようにこの世界の言葉を話せる自分にビックリだ。
言語体系はかなり日本語に似ているようで、敬語という概念もしっかりあるらしい。
「…………」
何故かおばさんがあんぐりと口を開け、信じられないようなものを見たように俺を見ている。
何? そんなおかしな事した?
彼女は震え、そして嬉しそうに言う。
「おお……エルリーゼ様がよろしくお願いしますと……そんなお言葉、今まで一度も……」
あ、そういう事。
そういえばエルリーゼって子供の頃から傍若無人で好き放題してたんだっけか。
自分が唯一魔女に対抗出来る聖女なのをいい事に(実際は偽物だけどな!)、言いたい放題のやりたい放題。
気に入らない奴は仕事をクビにするなんて当たり前で、成長してからは権力で潰して自殺に追い込むなんて事も当たり前のようにやっていたらしい。
気に入らない女を暴漢に襲わせて〇〇〇させるなんてクソ外道行為もやっていたはずだ。
ほんまクソやな、こいつ。
こいつと比べればそこらの悪役令嬢なんてぐう聖よぐう聖。
ただ、俺の今の外見からしてまだ五歳かそこらだと思うので今の時期ならばまだ、そこまで悪事は働いていないはずだ。
ただの我儘娘って感じだろう。
それから勉強を苦も無く終わらせ、俺は考えた。
あ、ちなみに勉強は楽勝だった。ていうか小学校一年レベルの算数なんて出来ない方がおかしいわ。
俺は……俺はこれからどうするか。
最初はめっちゃ萎えたものだが、よく考えればこれはこれでエテルナが死なないハッピーエンドへの道が開けたと言える。
何せエルリーゼこそがエテルナの悲劇の元凶だ。こいつさえいなければエテルナはもっと幸せになれたと断言出来る害悪である。
そして今は俺がエルリーゼなのだから、つまり俺が悪事を働かなければいいわけだ。
今の俺がどういう状態なのかは分からない。
ただの夢なのか、ラノベでよくある憑依なのか……それとも、実は転生でふとした拍子に俺の記憶が蘇ったパターンなのか。
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