ハーメルン
アルゼンチン帝国召喚
第五話「ロウリア王国戦2」

第五話「ロウリア王国戦2」
「ば、馬鹿な……!」

ロウリア王国東方征伐軍先遣隊指揮官であるアデムは驚愕した。亜人を嫌うアデムはこれからどのように亜人を殺そうか考えながらワイバーンを向かわせた。ギムの町にて行われるであろう破壊と殺戮を考えながら。
しかしそれは越境した瞬間ワイバーンより上空から現れた鉄竜によって呆気なく覆った。鉄竜は轟音を響かせながらワイバーンを次々と撃ち落としていき数分もしないうちに全滅させていた。
クワトイネ公国にあんな事が出来るとは思えない。ならば一体何処の国が……。そこまで考えてアデムはアルゼンチン帝国という国を思いだす。当時は極東の新興国だろうと相手にしなかったがもしそうじゃなかったのなら……。
そこまで考えたアデムは直ぐに馬を方向転換して逃げ始めた。後ろで自分を呼ぶ声がするもアデムには聞こえなかった。今すぐにでも逃げないとまずい。そう思ったからだ。
アデムのその思考は正しかった。しかし、逃げるには遅かった。

「な、なんだ?」

置いて行かれた先遣隊は何かが落ちてくる音がして上空を見る。すると黒い点がいくつも落ちてきていた。そしてそれらは自分たちへと落ちてきて、爆発した。それがいくつも起こり先遣隊は悲鳴すら上がらずに一瞬で全滅した。それでも攻撃の手は止まない。先遣隊が終われば次はその後ろ、後ろへと攻撃が加えられた。上空から鉄竜が襲い掛かっても来る。圧倒的な暴力の前に50万いた東方征伐軍は僅かな生き残りを残してこの世から消え去った。そして、その生き残りの中にアデムの姿は無かった。





攻撃を終えたアルゼンチン帝国は約束通り残党狩りをモイジ達に任せた。モイジは予め伝えられていたが実際に見ると改めてアルゼンチン帝国の力を思い知った。そして自分たちにその力が向けられない事に安堵もした。
生き残りの殆どを捕らえるか殺したモイジの元に報告が入る。クイラ王国方面からアルゼンチン帝国の部隊が越境し侵攻しているとの報告だ。攻撃は東方征伐軍の越境と同時に行われたそうだが既に国境のロウリア王国軍は全滅させたという。

「(アルゼンチン帝国は本当にロウリア王国軍を滅ぼすつもりなのだな)」

モイジは川を超え侵攻するアルゼンチン帝国軍の戦車師団を見ながらそのように思うのであった。







一方、海軍も動き出していた。旧太平洋艦隊は四つに分かれて動き始めた。一つは王都ジンハークへと向かう本隊と要道である三つの別働隊に分かれている。

「こ、これほどの巨大な船にも関わらず帆船よりも早いとは……!」

クワトイネ公国から派遣された観戦武官ブルーアイは感嘆する。現在彼は旧太平洋艦隊旗艦グレート・ディアボロス級原子力戦艦の艦橋にいた。旧太平洋艦隊の船の中でも一際大きいこの艦を初めて見た時はブルーアイのみならず海軍提督パンカーレも腰を抜かすほどだった。

「如何ですかな?アルゼンチン帝国が誇る戦艦から見る景色は」
「素晴らしいですね。まるで自分が王様になったような気分がします」

ブルーアイは司令長官であるベイン・アウナウスにそう返した。

「まもなくジンハークへと到着します。到着後は艦砲射撃及び艦対地ミサイルによる飽和攻撃を行います」
「艦砲射撃?ミサイル?それらは一体……」
「司令!前方に小型艇多数!敵船と思われます!」

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