ハーメルン
【外伝開始】メソポタミアの冥界でエレちゃんに仕えたいだけの人生だった…。

「ここしばらく坑道に潜る者達から引っ切り無しに嘆願が届く。坑道の奥から少なからずガルラ霊どもが湧き、とても仕事にならんとな。これは貴様の仕業か、雑種」

 その問いかけに来るものが来たか、と覚悟を決める。

(誠実に、堂々と、話すべきことを話す…。やるべきことはそれだけでいい)

 こうして幾らか言葉を交わしたが、誇り高き暴君という初対面の印象は深まるばかりだ。
 そしてギルガメッシュ王と相対する時に、頭を垂れて恵みを乞うのはむしろ逆鱗に触れる行為というのが俺の見立てだ。間違っても侮らず敬意を持って、そして自分の職位と職掌を忘れずに堂々と対するのが恐らくは一番まともに扱ってくれる…と思う。つまり自分に出来ることを出来るだけ精一杯にやり切るということだが。
 そこまでやっても向こう側の地雷を踏み抜いて即死する気配が感じられるのが救えないが、逆にその協力を得られた時の見返りも大きいはずだからファイトだ俺(自己暗示)。

『は…。ギルガメッシュ王の仰ること、全て事実です』
「ほう? つまり、これは我がウルクを脅かす意図の()()か?」

 享楽に歪んだ笑みはそのままに、半ば殺意の滲む言葉が投げつけられる。先ほどまでの威圧がお遊びに思えるような、凶悪というも生温い殺気。

『―――――――』

 無いはずの胃袋の奥から強烈な気持ち悪さが湧いてくる。卒倒しない自分を褒めてやりたかった。
 坑道奥から湧くガルラ霊は決して悪意を以てしたことではない。むしろ危害を与えないように細心の注意を払った()()()()()()()()()()だ。
 だがここまで強烈な悪意に晒されると、無条件で膝を折り、慈悲を乞いたくなる小胆な自分がいた。

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