ハーメルン
うちの脳内コンピューターが俺を勝たせようとしてくる
将棋電脳戦

4月になり、天衣は小学4年生になった。世間では九頭竜があいの研修会試験であいの両親相手に土下座をしたということで、ロリ王とか逆玉とか言われているけど、俺もその内ロリ王と呼ばれそうだな。いやでもこの世にロリ王は2人も必要ないし、空さんが九頭竜をロリ王にしてくれるだろう。

賢王のタイトルを取ったけど、別にこれで九頭竜竜王のように大木賢王と呼ばれることは無い。七大タイトル外だからね仕方ないね。来年か再来年には八大タイトルになると思うけど。

(あー、最強のソフトと持ち時間五時間で一騎討ちとか、普通のプロ棋士なら拷問ものだろ。しかも一発勝負じゃなくて三番勝負とか、プロ棋士側に言い訳させる気がねえ)
『練習用のソフトには角落ちで勝てましたが、性能は一段下のものを渡されていますしね』
(今まで通り、ノータイムで勝てるか?)
『勝てます。少なくとも今までサンドバッグにしていたソフトよりかは強いですが、それでもまだノータイムで勝てますね』

「失礼します」

対局前に俺の控室に入って来たのは、今から俺が対戦する将棋ソフトの開発者。名前は……憶えてないな。

それからの会話は、わりと穏やかだった。何か俺の対局の棋譜も読み込ませたとか言ってるけど、表に出ている俺の対局の棋譜数、俺がこの半月で指した対局数の100分の1にも満たねえよ。

世間では俺の対局においてソフトのカンニングも疑われているんだけど、ソフトを上回ったらそんなことも言えなくなるはず。そもそも全てノータイムなのに、カンニングする暇がどこにあるんだか。

ちなみに天衣は応援に来ないと言っていたけど、現地で晶さんと一緒に変装した姿を見かけた。一応、応援には来てくれたらしい。まあ比叡山だしな。比較的神戸から近い場所か。ああ見えてかなりの歴女だし、歴女なら比叡山延暦寺は訪れたい場所かもしれない。

『さて、対戦相手が来ましたよ。振り駒はpopper君ですか。……これ絶対、先手はプロ棋士側になるんじゃないですか?』
(駒を人が握らせて、落としただけだからな。まあとりあえず、先手なら負けは無いか)

賢王戦の表彰式も終わり、ロボットのポッパー君が振り駒をした結果、俺の先手が決まる。アイが先手で、負けるわけがねえな。

「10時になりましたので、対局を開始して下さい」
「よろしくお願いします」
『1六歩』
(……は?)

そしてアイの1手目は、端歩を突けというものだった。コイツは何を考えているんだ。





将棋電脳戦の第1局。大木の先手番だが、大木が開始してから30分間動かない。いつもならノータイムで指しているはずだが、微動だにしていない。

「ちょ、これどうするんですか!?もはや放送事故ですよ!」

ニコ生で既に人気が(悪い意味で)ある、大盤解説を任されていた九頭竜は、初手から30分も盤面が動かない局面に焦りを感じていた。一方で大木は、アイとの脳内喧嘩が収まっていなかった。

『一手……いえ、二手パスして勝ってみせます。「先手番だから勝てた」みたいな風評被害を打ち消します』
(めんどくせええええ!どうせ2局目は後手番だから良いじゃねーか!誰もケチつけねえよ!)
『2局目までの期間の、マスターへの風評被害を防ぎます。言っておきますけど、1六歩以外を指した瞬間にこの対局はもう助けませんからね?』

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