第16局 バケモノども
姫松のいるブロックの先鋒戦が終わったタイミングで、もう1つのブロックの先鋒戦が始まろうとしていた。
機材の調整で開始が少し遅れていたのが、余計見る者の期待感を上げていた。
『死の先鋒戦が始まろうとしています……!最初に入場してきましたのは、去年の個人戦準優勝!優勝候補の一角、臨海女子の先鋒を務めます辻垣内智葉!去年までは全員が留学生という編成だった臨海女子ですが、今年は唯一の日本人、辻垣内が先鋒です!』
眼鏡をかけて長髪ロングを後ろでしばってまとめた智葉が、卓につく。その様子はいつもと何も変わらない、淡々とした所作に見えた。
『続きまして鹿児島の永水女子のエース、神代小蒔!全国ランキング6位の高校のエースを務める実力は、1回戦でも証明しています!』
巫女服に身を包み、おだやかな表情で卓に座るのは、鹿児島、霧島のお姫様だ。
『そしてこの2回戦のダークホースとなるか、清澄高校、片岡優希!東場での爆発力で、他校を引き離しにかかります!』
1回戦とは打って変わって、マントに身を包んだその姿は、小さいながらも、ヒーローを志す少女にも見えた。その瞳に揺らぎはない。1年生だからという言い訳もしない。ただ目の前の強敵たちしか、彼女の瞳には映っていないようだった。
『そしてそして1回戦では圧倒的な力を見せつけました、関西は奈良の晩成高校の王者、小走やえ!!その好戦的な雀風は、今日は誰をねじ伏せるのか?!」
王者がやってくる。右手はポケットのお守りを握りしめ、覚悟を決めるように入る前に一礼すると、顔を上げたその表情は真剣そのもの。覚悟の宿った晩成の王者は今日も暴れるつもりだ。
全員が卓についた。2回戦の中で最も注目度の高いカードが始まる。
放送用の荘厳な局の開始音が流れた。
「「「「よろしくお願いします」」」」
『大変お待たせしました!2回戦先鋒戦、スタートです!』
東1局 親 片岡 ドラ{三}
(さて、やはり起家は清澄の1年か)
自動卓から山が上がり、清澄の優希が回したサイコロの出目に応じて、各自配牌を取る。今回は7……対面の智葉の山だ。
東家 片岡優希
南家 小走やえ
西家 辻垣内智葉
北家 神代小蒔
すぐに場は動く。
「リーチだじぇ!」
(3巡目……)
やはり先制したのは親の片岡優希。{2六横八}と切ってリーチに打って出た。東場での速さは、常人を遥かに凌駕する。
その捨て牌を見て、少し考えた後、下家の智葉を見て、静かにやえは{六}切りとした。
「チー」
その捨て牌に反応したのは智葉。即座にまずは起こりうる最悪の偶発役、一発を消した。神代も、それを見て現物を合わせる。
優希はやえと智葉の狙いが一発消しであることは気付いていた。
(3年共が……小細工すんなだじぇ)
「ツモッ!4000オール」
優希 手牌 ドラ{4}
{②③④234567三四四四} ツモ{三}
(ズラしてもツモり上げるか)
倒された手牌を見て、智葉が口角を上げる。これは思ったよりは楽しめそうだ、と。
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