第十九話 すれ違う想い
決着がついた。
平民上がりの魔法使いが参加するという決闘を聞きつけたモノ好きな貴族。そして、一般公開しているという事からリーランに住んでいる十数人の平民達もその決闘を観ていた。
それは今まで聞いてきた決闘とは別物だった。
魔法のぶつけ合いが主で、才能がある者。修練を重ねて来た者が強い。確かにそうだろう。現に平民という魔法の教育を少ししか学んでいないキィが二人倒し、シュージがカモ君を含めた五人を倒した。魔法は貴族だけの物ではないと証明した。
だが、そんな才能。修練を重ねて来た魔法も当らなければ意味がない事を証明したのが貴族であるカモ君だった。
まず、その素早い動きで翻弄し、相手の魔法をかいくぐった。相手の詠唱が終わり、その魔法を放ったとしてもカモ君の有利な属性の魔法がピンポイントで相殺していく。相手の詠唱が終わる前に先に攻撃して詠唱を中断させる。
知識だけでなく、技術が必要だと言う事が必要だと言う事を見せつけた。どんなに強い魔法も使えなければ意味がないということを示した。
また、勝ったと思っても最後まで油断しない事の大切さを教えたのはコーテだった。
カモ君との勝負で集中力が削られ切ったシュージは彼女の存在を忘れていたがために最後はあっさりとやられてしまった。
魔法使いは魔法だけが使えればいいというものではない。魔法使いだけではない。戦いの中で常に自分がどんな状況にあるかを判断し、行動しなければならない。
それを示した。と、最後にカモ君とコーテを高く評価したシバ学園長の演説を受けながら、カモ君は戦闘不能や失格になった選手が運ばれる運動場の隅っこに設立されたテントのベッドの上で横になって聞いていた。
その隣のベッドにはシュージに倒された同級生や先輩達が寝かされていた。
彼等はカモ君よりも先にやられたが、予想以上にダメージが大きかったのか未だに目を覚まさない。命や後遺症に関わるような事はないと言っていたが、まだ目を覚まさないという事はそれだけシュージの魔法の威力が高かったという事だ。
よく耐えきったな俺。いや、最後までは耐え切れなかったけど。
エレメンタルマスターだから受けるダメージは彼等の倍だろうけど、これまで鍛えてきた事と度重なるダンジョン攻略でレベルが上がり耐久力は彼等の倍以上になったのだろう。
それと火のお守り。これが無ければシュージの魔法と相対した瞬間に負けが決まっていただろう。それもシュージの。主人公の手に渡るんだろうな。と考えていたが、そんなシュージはというとベッドに寝かされるほどダメージは負っていない者が座らされる長椅子に座らされながら黒髪の少女。キィからぎゃんぎゃんと負けたことに文句を言われていた。
「どうしてあんたあの時油断したの!これじゃあ私達の負けじゃない!あんたの火の指輪もあのロリっ子に渡す羽目になったじゃない!」
「し、仕方ないだろ。俺はエミールとの打ち合いで魔力も体力も使い切ったんだから。それにキィだって油断してエミールに負けたじゃないか」
「そうだけど!そうだけど!これじゃあ私の学園生活が、優雅な生活がぁあああ…」
キィは決闘で勝って、賭けていたレアアイテムを総取りして、自分達に合わないもの売り払らって豪遊するつもりだった。
それなのに最後まで勝ち残ったのは今の今まで戦闘にほとんど参加せず最後にいい所を持って行ったコーテだった。本来ならそれは自分の位置だったのにと悔しがるキィを見てカモ君は内心焦っていた。
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