第七話 喜べよ、お前の嫁だ
カモ君がダンジョン攻略してから更に一年がたった春。ギネに呼び出されたので内心嫌々でギネの部屋に行くと来週の休みの日に俺の婚約者に会わせてやると上から目線で言われた。
最初は何の冗談だと思ったが自分が貴族だという事をすっかり忘れていたカモ君。
毎日を早朝に魔法の修練。弟妹達との触れ合い。クーとはいつも命懸けの訓練をした後にルーナに癒される。
昼に駐屯所での稽古。時々、領の見回りを称してのモンスターハンティング。アイテム置いてけ!アイテム置いてけ!ダンジョンが出来てないか期待するがまだ時期じゃなかったらしく発見できていない。最近の成果は自然発生したはぐれゴブリンやはぐれコボルトが持っていた錆びた剣や斧。皮鎧といったゴミアイテムばかりだった。
夜に貴族としてのこの国の情勢の勉強をしていたが、朝と昼の生活リズムが濃過ぎて勉強の感覚がすっかりなくなっていた。
そんな半分冒険者になりつつあるカモ君に嫁だと?いや聞けば相手の方が爵位は上の伯爵令嬢らしいから婿になるのか?
というかギネのやつ、常日頃からお前は侯爵辺りのやつと結婚しろという癖に、外面は従っている振りをしている自分に見切りをつけて適当な相手を用意して、まだ御しやすいクーを使ってのし上がる気かとカモ君は疑ってしまう。
確かにクーの成長速度はカモ君も舌を巻く。まだ六歳なのに風魔法レベル2まで至り、火魔法もレベル2になるのも時間の問題じゃないかと思うぐらいだ。そんなクーなら侯爵。下手したら王族の親族。公爵の娘をゲットするんじゃないかとギネは考えたんだろう。
まー、カモ君はクーなら魔法レベル5の王級を修得して王様になってもいいんじゃないかと兄馬鹿なことも考えている。
「婚約者ですか。どのような相手なのでしょうか?」
「ハント伯爵の妾の小娘だ。貴様には丁度いい相手だ」
こいつ殴ってもいいかな?
カモ君は長年鍛えたポーカーフェイスで殴りたい衝動を抑えた。
どんだけ自分の出世の事しか考えてないんだ。王都からの仕事を受け持っていると言うが実際は自分の貴族という立場だけを使って他の人間を働かせているだけ。いつもやっている仕事は自分にとってやり易い仕事ばかりを選択しているだけだ。
それが間違いとは言わないが、こうまでして人間関係に無頓着とかありえねえ。どんな教育を受ければこんな風になるんだ。
ていうか婿になったらこの家を出ていく。つまりクーとルーナに会えなくなるじゃないか。そんな事、絶対にNOである。この婚約、絶対に破棄させねば。てか、それ以前にカモ君に婚約者がいたなんて設定あっただろうか?
しかし、このギネが俺に丁度いいという娘か。えー、このギネがちょうどいいとかどんなドラ娘を押し付けられるんだか。絶対コイツ爵位とか立場しか見てないで決めたな。
色んな意味で嫌な予感しかしないカモ君。
婚約(仮)パーティーに家族全員でハント伯爵家の屋敷に出席するからそれまで怪我でもしたら困るから昼の駐屯所での訓練を控えるように言われた。その事は衛兵の誰かに伝えたのかと聞いたら伝えていないと馬鹿な答えが返ってきた。
部屋を出たらすぐにプッチスを使いに出してしばらく訓練に参加できない事を連絡してもらう事にした。
ギネって、もしかして人間関係でうまくいかなかったからこんなクズになっちゃたんじゃないか。と、思わざる得ないカモ君だった。
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