ハーメルン
剣八の墓標
まっくらい

「二代目『剣八』——卯ノ花剣八がな」







暗い。昏い、冥い、啗い、啖らい——


喰らえ!!









 ◼️◼️◼️



「……い、……きろ」

 頭が痛い。
 意識がグラグラと揺らいで、どうやら吐き気もするようだ。
 うだるような夏の日差しに晒されているのも相まって、今しがた全身に刻み込まれた打撲の痛みが、じんと熱を孕んで躰を包み込んでいるような錯覚を覚えずにはいられない。

 ここは一体? 僕は、何を——

「——ぃ加減、起きろってんだコノヤロ──ッ!」

「ぐっはぁ!?」

 痛っったい!? 
 いきなり響いた頭蓋への衝撃に瞠目しながら、僕はやっと完全に目を醒ました。はっきりしない視界をふらふらと彷徨わせれば、今にも鉄拳を振りかざそうとするガラの悪い男が目に入ってくる……。

「ま、待って! もう起きてますから——」

「どっせ──い!」

「ぶべぁ!!」

 必死に叫んだ制止の声は聞き入れられず、無意味な拳骨を二度も喰らった僕は、側から見れば気味がいいほどに打ち飛ばされてしまう。ゴロゴロと不格好に地面を転がり、肌に刺さっていく細かい石くれなどに顔をしかめることになった。

「な、なにするんですか。これが医者のやること——」

「ついでにオラァ!」

「ついでにって何だこの野郎!!!!」

「痛えなチクショ────!!」

 いい加減にしろよ、こっちだってそう何度も殴られるわけないだろ。調子に乗って人を散々コケにしてくれたクソ野郎の顔面にボギャッと拳を入れ、なんとかノックダウンすることに成功した。悪は滅びたのだ。

「う、ウデを上げたじゃねぇか。流石はアイツのガキだぜ……」

 つぅと血の垂れる鼻を押さえながら悪びれもせずに言う男を前に、僕は苦い表情で吐き捨てた。

「……バカを言わないでくださいよ。貴方ほどの瞬歩の達人が、僕みたいなヒヨッ子のパンチをまともに喰らうはずはないんだ」

「フン、たりめぇよ。『雷迅』とまで言われたこの天示郎(てんじろう)サマが、て()ェの拳骨ごときを本当にかわせないワケねぇだろうが」

「……じゃあ、なぜ?」

「ツッコミをわざわざ避けるような無粋なボケがいるかよ」

「漫才やってんじゃねぇんだぞ……ッ!」

 そんなくだらない理由で二回もぶん殴られたのかよ。死ぬほど憎たらしいが、かといってもう一度殴ろうとしても絶対に当たらないだろう。

 こめかみをヒクつかせながら悔しさに身悶えする僕を白い目で見てくる彼の名前は麒麟寺(きりんじ)天示郎(てんじろう)。隊士の治療を専門とする護廷十三隊四番隊隊長であり、世に言う医療霊術『回道』を生み出した死神だ。

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