ハーメルン
剣八の墓標
雨は未だ止まず



「うっ……うわああああッッッ!?!?」

 深く静かな真夜中の病室。
 ふかふかの枕に頭を預け、ひどく疲れた体を休めようと気持ちよく眠っていた矢先。ハッと、突然に聞こえてきたとんでもない大声に俺は叩き起こされた。

「腕が、僕の腕が!!」

 うおお、やかましい、クソやかましいぞ。こんな夜更けにバカでかい声を出しよってッ。

「誰か——」

五月蝿(うるさ)いんじゃい!! 誰やこのっ、ふざけてンのか!ぶち殺したるぞコラ!!!!」

 俺の眠りを妨げやがったドアホへの怒りをめいっぱいに込めつつ、吼翔(くうとび)権十郎は寝具から飛び上がって猛烈な怒鳴り声を上げた。

「ひっ」

 蚊の鳴くような声を漏らしたっきりドアホは押し黙りおったが、むろんタダじゃあ済まさねえぞ。最低一発はぶん殴ろうという腹積もりで声がした方にズンズン向かっていくと……はて、腕だって?

「この野郎、覚悟は出来てんだろう……ぬ、輔忌か」

「ふ、副隊長? どうしてここに」

 なんだ、隊長のセガレか。
 すっぱりと両腕を切り落とされ、焦燥からかびっしりと冷や汗をかいている上司の息子が目に入ってきた。

「……あ、あの」

「…………」

 ……どうやら顔を真っ青にしているのは、怒れる上司に出会(でくわ)したからって訳じゃあねぇだろう。そんな様子を見ていると()()()()()思えてきた俺は、すわ噴火も寸前かというほどだった怒りが段々と収まっていくのを感じつつあった。

 ある意味では弟子とも言える小僧への”複雑な感情”をどう表したものか、暫しお互いを気まずげに見つめあいながら言葉に詰まっていると……あああ、面倒くさい奴等が来おったぞ。相も変わらずドタドタと喧しい連中やな。



如何(いかが)なさったか吼翔副隊長!」


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