避けられぬ戦い
見届ける資格など、ある筈が無い。
戦士としての矜持を軽んじてはならない——等と、身の毛もよだつばかりに無責任な題目をさも”仕方がない”とでも言うように振りかざし、私が語るところの『誇りに殉ずる道』に従って進む息子を——それがまるで無謀な、自殺まがいの愚行だというのに——止める事さえしなかった。
……いや、それも、それすらも。
今にして思えば、輔忌に対して抱いてしまった厭わしい感情に対する言い訳に過ぎないのだろうか?
私は——あの子が分からない。
その違和に初めから気付いていた訳ではない。けれど今回の件と言い、あの子が命まで懸けるに足る”何か”は確かに在る筈なのに、それが全く理解できない。
そうして輔忌が「吼翔との決闘を決めた」と一方的に言って聞かせたあの日に漸く、私はその事実に克明に気付かされたのだ。
何を見ているのか、何時を視ているのかすら判然としない視線はまるで”あの人”にそっくりで——
かつて惹かれた筈のその色を。
得手勝手にも、『恐ろしい』等と感じていた事を。
◼️◼️◼️
きりきり、きりきり……と。
金属がゆっくり引き延ばされていくかのようなその雑音を耳にしながら、吼翔は目前で姿を変えていく斬魄刀の様相を確かめていた。
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