ハーメルン
専業主婦、園城寺怜のプロ麻雀観戦記
第19話 専業主婦と悪待ちのルーキー

「なー竜華、それなんて花なん?」
 
 怜は部屋のリビングのガラスの花瓶に、花を生けている竜華に声をかけた。

「カーネーションや」

「カーネーションに青い色なんてあるんか?」

「最近できた品種らしくてなあ、花言葉は永遠の幸福……部屋に置くと幸せになれるって人気なんよ」

 大切なものを扱うように花を愛でている竜華の姿を見て、リビングにお花があると華やかな気分になるから、幸福っていうのは間違ってないかもしれへんなあと怜は思った。

「この白いのはなんなん?」

「それはかすみ草やな、あっ水用意してくるから少し持っててや」

 竜華は怜に花束を渡すと洗面所へ水を汲みに行った。
 受け取った花束は、カネーションの青色にかすみ草の白い小さい花が粉雪のように降っていてとても綺麗だった。

「まあでも、うちはこういう不自然な花より、青い紫陽花ほうが好きやな」

 竜華に聞かれないように、怜はそうぼそっと呟いた。

 花瓶に花を生けるお手伝いも終わり、一仕事終えた怜は、竜華に膝枕をしてもらいながらソファーに寝転んでのんびりしていた。

「旅行も楽しかったけど、やっぱり家がおちつくなあ」

「それは良かったわあ」

 竜華は嬉しそうに怜の髪を優しく撫でた。
 旅行中に無断で勝手に麻雀をしたことは、何故か竜華にバレてしまったので、とても怒られた。
 竜華は怒っていても泣いてしまえば、大抵のことは許してくれる。そのため、怜は早めに泣くようにしているのだが、今回は泣いても許してくれなかったので、相当ご立腹のようだった。
 携帯電話越しに、竜華が泉に低い声で詰問しながら激昂している様子を横で見ていて震え上がったので、怜は泉にちょっとだけ悪いことをしたなあと思った。

「麻雀の試合見るで!」

「はいはい」

 怜がそう言うと、竜華はリモコンを操作してテレビの電源をつけた。
 満員の観客席と雀卓の緑が映し出される。

松山 130500
大宮 100900
佐久 98500
横浜 70100

 松山リードの中堅戦、2位につける大宮はポイントゲッターの大星淡を登板させ、逆転を狙いたい構えだ。このまま大将戦までもつれ込むと守護神の姉帯さんがでてくるため、はやめに逆転したいのが各チームの思惑だ。
 大星さんの登板にあわせて、佐久が選手交代の動きを見せた。

ROOKIE CHECK
上埜 久
ドラフト5位  個人戦順位 NEW
清澄→信濃大→フリー→DS石油→帝国新薬→
佐久
0勝0敗0H
悪待ちに定評のある期待の即戦力ルーキー

『さあさあ!各チームとも交代ラッシュだああああああ、大宮の誇るポイントゲッター大星プロに対抗して佐久もルーキー投入!!!!!』

『上埜プロはプロ初登板で今日初体験を迎えますね!』

『なんでそのワードチョイスしたの!?というか気に入ってるよねその言い回し!』

 ハイテンションな実況席は、竜華の仕事仲間の福与アナと、永世七冠を獲得した生ける伝説小鍛治健夜さんである。

「ああ、この人……清澄の中堅の人か信濃行ってたんやな」

「竜華知ってるん?」

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