第9話 専業主婦と清水谷竜華
「おとうふ、おとうふ〜♪」
平日の夕方、怜は陽気な声で朝に竜華が作った豆腐ハンバーグを、レンジでチンして温まるのを待っていた。
ハンバーグをメインにしたワンプレートの上に、ご飯までのっているのは怜のあたためが、一回で済むようにとの竜華側からの配慮である。ここのところ怜がよくお茶碗に盛ったご飯をあたため忘れて、そのまま手付かずという事態が頻発したためそれを回避する狙いだ。
ちなみにレンジであたためる必要のない別皿のポテトサラダは、怜が存在に気がつかなかったため、冷蔵庫に入ったまま忘れ去られる運命にあった。
「やっぱ、竜華のつくったごはんおいしいわあ」
怜は、ケチャップと中濃ソースを煮詰めた家庭的な味のハンバーグに舌鼓をうち、食べ終えると満足げな表情でソファーに横になった。
その後、怜はテレビのプロ麻雀中継をつけたがとくに見る気もなく、BGMがわりにしながらうたた寝モードに入った。
食後のお昼寝の時間を怜は、大事にしているのである。
ツモ! 800 1600!
ウトウトしていると、テレビからよく聞き慣れた声が聞こえてきた。
怜は眠い目を擦りながら、テレビを見た。
清水谷 竜華 昨年度成績
ドラフト2位 個人戦順位 14位
千里山→エミネンシア神戸
4勝3敗31H
昨年度は53試合に登板と飛躍の年となった。クールな闘牌でチームを勝利に導く。
「あー竜華、今日試合出てるんやな」
エミネンシア神戸の接戦リードの副将戦、時刻はすでに19時を回っていた。
竜華の麻雀をテレビではクールな闘牌と柔らかい表現で紹介しているが、実際にはゴミを見る目で対戦相手を冷酷無慈悲に処理していく麻雀である。
高校時代は集中力にムラがあったが、プロに入ってから、常に高い集中を維持できるようになった。
「相変わらず、ヤバイ目しとるな、こいつ」
足を組んで弥勒菩薩のポーズのまま、理牌もせずに打ち続ける姿を見て、竜華のファンは愛想がないとか怖いとか思わないんやろか?と怜は疑問に感じながらも竜華を応援する。
そんな時、竜華と同卓している中に見知った雀士がいることに気がついた。
「あー有珠山高校のひとやん」
獅子原 爽 昨年度成績
ドラフト1位 個人戦順位 41位
有珠山→立直大→佐久
3勝2敗5H4S
ルーキーながらも昨年度は起用法を固定しない変幻自在のトリックスターとして活躍。
ルーキーイヤーに、獅子原さんは先発中継ぎ抑えなど起用法を固定しない方法で活躍していた。ドラフト1位ルーキーを便利屋のように使う采配に批判が集まったが、おそらくこれが一番活躍できる起用法なんじゃないかと怜は感じていた。
獅子原さんは、能力者であることは間違いなさそうなのだが、複数所持しているようでイマイチ掴み所のない能力であり対策がしにくい。しかし短い試合間隔が苦手なのか登板間隔がかなり空いていることが欠点だ。
「獅子原さん、この河で清一色で手作りしとるとか意味不明や……未来視なかったら絶対振り込むわ」
局面がかなり複雑化しながらも、竜華は当たり牌を抑えてきっちりオリきる。
ツモ! 1300 2600
しかし、獅子原さんは他家に頼ることなくツモ和了を繰り返し、首位の竜華に肉薄してくる。
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