15話 一花のお願い
「はいはい!お寝坊さん起きてください!」
ベタにお玉とフライパンをかんかん鳴らしながら、らいはが起こす。だが、まだ少し眠いので狸寝入りをきめる風太郎。しかし、もう一つの目覚ましが鳴り響く。
「はい義兄さん!!いい加減起きてください!!」
今度は昨日泊まった五月がフライ返しとボウルを使って同じように音を出す。
「うるせぇ!近所迷惑だろ!」
流石に朝からこんな音を出すのは近所にも迷惑だ。急いで、起きて注意しようとする。しかし、その時にはもう二人のめざましは終わっていた。
「じゃあさっさと起きて」
「もう朝ごはんもできてますから」
すでに二人はパジャマからの着替えも終えていて、朝ごはんが並べられている。
「私も手伝ったんですから!」
そう言って五月が得意げに胸を張る。だが、五月の料理というものは食べたことない。M・A・Yのレビュアーとしてで活動している通り、食べるの専門だとも思っていた。
「と言うか、大丈夫だったのか?」
彼女の視覚はだいぶ狭くなっている。右目を五十円玉の穴からのぞくような感じだが、大丈夫だったのか心配になった。
「私が見てたから大丈夫だよ!五月さんは・・・すごかったよ」
決して、上手や下手ではなく、すごいというらいはの感想がテーブルの上にあるメニューを見て分かった。
「・・・五月。お前、うちで料理禁止」
「え!?義兄さんそれはあんまりです!」
並べられた目玉焼き・・・と卵焼きとスクランブルエッグとオムレツ・・・決して初期の三玖の様に形が崩れているとかそう言う問題ではない。普通においしそうではあるが、卵を使いすぎだ。
「うちの家計知ってるよな!?」
「わ、私の朝食は普段これくらいで!」
「だからって!一パックまるまる使うバカがいるか!」
そうやって喧嘩をしている二人だったが、らいははそれを見てニコニコしている。
「やっぱ、二人はなかよしだよねー」
二人は騒がしくて耳に届いていないようだったが、その微笑ましい光景をらいはは眺めていた。
その後は、朝食を食べ終えて、朝の身支度を済ませ風太郎と五月の二人タワーマンションへ戻ることにした。
「じゃあ、行ってくる」
「らいはちゃん!お泊り楽しかったです!」
「うん!私も楽しかった!五月さ・・・お姉ちゃん!・・・まだ、昔の呼び方になっちゃう」
「大丈夫ですよ。いつかは自然に呼べますから」
そう言って二人は中野家のタワーマンションへ向かった。その間に風太郎は借りた本を読みながら、あることが書いてあったので実践してみることにした。
「五月。左手で右肩掴んでくれ」
「??」
そう言って言われ通りにしてみる。
「これが、外での歩き方な。もし、外に出るときは誰かの肩をつかんでいるのが安定するらしい」
そして二人でそうやって歩いているが、風太郎が五月の後ろにいるので会話が出来なく、そのまま二人で進んでいくのが、シュールであった。
「・・・やめましょうか」
「だな・・・」
人混みの際は今の様にすべきだが、今みたいに人通りの少ない場合は別に普通に歩いてて構わない。
[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/4
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク