16話 応援できない
一花のお願いとは風太郎と付き合うこと、じゃないと、アルバイトの承認票を書いてくれないらしい。しかし、風太郎の答えは決まっている。
「・・・悪い。それはできない」
そう難しい表情を浮かべると、断られたのがわかったにもかかわらず続ける。
「お願い、本当に、二番とか・・・ううん、なんだっていい・・・私を彼女に・・・してよぉ」
そう、泣き落としの様に言う一花だが、何があって、その結論が出てきたのかが、気になった。ついには順位まで付け始めたので、聞かないわけにはいかない。ただ、流れ的に先ほどの件だろう。
「オーディション・・・ダメだったのか?」
筆談でそれを渡し、それを確認すると、何か諦めたような表情を浮かべる・・・ダメだったのか・・・
「ううん。受かったよ・・・」
「は?」
オーディションが受かったのならもっと喜んで、報告すべきなのではないかとも思ったが、そうでもない反応をする一花に対して、風太郎は困惑するしかなかった。そして、さらに一花から一枚のメモ帳を渡される。
「二十二時、ホテル、1202号室・・・なんだこれ」
そう書いてあるメモ帳の意味がよくわからなかったが、一花は話をする。
「うん。監督が、ここで、演技をすれば、合格。役をやらせてもらえるよ」
「そうなのか・・・ホテルで演技ってよくあることなのか?」
「わかんない・・・私は初めてだし・・・でも・・・これをしないと、お芝居出来ない・・・」
正直、それならば行って演技をして合格を頂いて、一花、女優業復活、となるのが一番いいのだろうが、どうやら彼女はそれをしたくない様だ。そう思っていると、風太郎のポケットのスマホから着信が入る、相手は二乃だ。今彼女はリビングにいるので、そのまま呼べばいいのに。
「今すぐ、部屋来て」
そう言う言われたので、リビングへ向かおうとする。一花に断りを入れて、部屋を出ようとしたときだった。
「悪い、一花ちょっと二乃に呼ばれて・・・」
「待って!!!」
そう断って部屋を出ようとするが、とびかかるように止められる。そのまま二人で、床に滑り落ち、一花が風太郎の上に乗っている状態になった。
「ごめん、本当にごめん・・・・お願い・・・」
そう言ってなぜか、上に乗っている一花が上着を脱ぎ始める。
「は!?お、おい一花!?」
急な行動に、風太郎は驚きながらも、上半身下着になった一花を見ないように、その場から抜け出そうとする。
「だって・・・こんなで、私・・・枕って・・・でも、そうしないと・・・」
「バカ!離せ!」
所々、何を言っているかわからないが、おかしいのは確かだ。何とかして振りほどかないとならない。そう必死に抵抗しているときに。ガチャッと扉が開く。
「何やってんの!!」
その正体は先ほど、電話をかけてきた二乃だ。すぐ来なかったのを心配してきてくれたのか。
「離れなさいよ!」
そう言って上に乗っかっている一花を強引に引きはがそうとするが、しかし、一花も止まらない。
「だめ・・今じゃないと・・・わたしもう・・・」
まだぶつぶつと何か言っていた。そして、その騒ぎを聞きつけた他の姉妹も到着して、この現状を終わらせた。
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