20話 再出発
ジリリリリッと、普段聞き慣れない目覚ましの音で風太郎が目を覚ます。そして、その横で一緒に寝ていた四葉も、もぞもぞと起きる。
「おはよ、風太郎」
「おはよう、四葉。いつもこんな時間に起きてるのか」
「うん。朝はランニングしてた」
アラームが鳴った時間はまだ、午前五時。体育大に通っている四葉は普段は朝早く起きてランニングを欠かさず行っていたらしいので、その名残だ。
「アハハ・・・今はできないけど、この時間に慣れちゃって」
風太郎は早くても、七時半くらいなので、決して遅いわけではない。だが、それよりも早く起きるようだ。
「じゃあ、せっかくだし、散歩でも行くか?」
「え?いいの?」
「ああ、俺も目が覚めちゃったし」
そう言って思い切り、伸びをする。そして、着替えることにし、二人で簡単に外着に着替えた。四葉は現在一人で着替えられないので、風太郎に手伝ってもらう。
「み、見ないでよ!」
「見ねーよ。と言うか、前に見たし」
「あ、あれは・・・とにかく今はダメ!」
来て初日に彼女のありとあらゆるものを見てしまったが、今更、見ないようにする。彼女の下着が見えないようにひざから上にタオルを置き、彼女のパジャマをくるぶしまで脱がす。そして、風太郎が彼女の足をあげて服を足から外す。その後は着替えのジャージを足に入れる。後は四葉が座ったままでもジャージをあげることが出来る。
「これでよし!」
「着替えも出来るようにならないとな」
「あ、うん・・・ごめんね」
彼女が手伝わせて申し訳ないと思っているのだろうか、少し、暗い表情をしたので、風太郎は四葉の髪の毛をわしゃわしゃ撫で始める。
「ま、このまま四葉の着替えを見れる役得ポジションにいても俺はいいけどなー」
「ええ!?」
「冗談だ。やることは多いが、一個ずつ頑張っていこう」
「・・・うん!」
そう返事をし二人で風太郎が四葉の車いすを押して、外へ散歩に出かけた。
「夏とはいえ、朝は少し冷えるな」
「そうかな?私はちょうどいいよ?」
マンションを出て、近辺を散歩する。風太郎と四葉はこの様に二人でゆっくりするのも、久々だ。こんな早朝では人はほとんど通っていない。犬の散歩やジョギング等を行う人が主だった。
「どこか行きたいところはあるか?」
「うーん・・・ブラブラしたい」
「りょーかい」
そう言われたので、ただ二人でその辺を歩きながら世間話や姉妹のことなどを話す。
「五月に義兄さんって言われるの慣れた?」
「いいや。だから、この前仕返しでねーちゃんって呼んだら、不気味って言われた」
「アハハ、でも、早いね。義兄さんって言うのは」
「まぁな。ってことは、上三人が義姉か・・・」
そう言って一花、二乃、三玖が自分の姉という立場になるのを想像してみる。
「一花と二乃はわからないでもないが、三玖が義姉になるって言うのが想像できん」
一花は五つ子の長女で客観的に物事を見れる、二乃は見ての通り、しっかり者の姉御肌って感じである。三玖はどっちかって言うとマイペースな感じで姉という感じではない。
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