学園初日、マリエールはどの攻略対象とも同じクラスにならなかった。
どうやら同学年の攻略対象者は全員ヒロインの少女と同じクラスになったようだった。
これが思わぬ部分にまで発揮されるヒロインという役割の性能だとしたらと考えるとめまいを覚えるようだ。同時に悪役令嬢の運の悪さにも。
同学年での攻略対象は王子、宰相の息子、騎士団長の息子。この王子以外の二人はほぼ王子の護衛のため同じクラスになるのは分かりきっていた。
その為王子と同じクラスになれるかどうかが肝心だったのだが、結果はご覧の有様である。
この程度ならまだ偶然だと言い張れるかもしれない、と内心の焦りを押し殺していると王子のいる教室に着いた。
深呼吸をし、扉を開ける。
「失礼いたしますわ」
一瞬ざわりと教室内の空気が揺れたが構わず王子の下へ向かう。
「ごきげんよう、クリス様。同じ教室で勉学に励むことができないこと、わたくしとても寂しく思いますわ……」
「やあ、マリィ。僕も君と離れて寂しく思っているよ」
「それで、楽しみにされていた新しいお友達はできましたの?」
マリエールの笑いを含んだ声に王子は大げさに肩を落として見せた。
今ではこうした戯れも不敬だったかと不安にならずに行える。その程度の関係性は築いてきた。
「それがご覧の有様だよ……」
「まあ、綺麗なドーナツですこと」
前回会った時に心底楽しみにしているようであったが、周りは見事に空間が開いてしまって、遠巻きにされていた。みな挨拶程度に声をかけて去っていってしまったようだ。
「あっでも、」
王子はきょろきょろと辺りを見回して、誰かに手招きした。
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