ハーメルン
ヒロインと悪役令嬢がVSするはずだったのに
第8話

武闘大会(運動会)が終わったら次はなんのイベントがくるかと言えば、そう文化祭だ。
正式名称を魔法研究発表会といって、学校中が魔法を使った色んな研究結果の発表の場となる行事である。昔は歴史研究文化研究の発表ばかりだったため文化祭などと呼ばれている、らしい。
クラスやクラブ活動ごとに、全作業のうち8割を魔法で賄う事を前提として、料理の出店を出したりすることが出来る。展示はもちろん劇や喫茶店や屋台、お化け屋敷なども過去にはあり、生徒にとっては完全にお祭り騒ぎの場である。
魔法の出来が成績にプラス評価としてつくので生徒たちはそれはもう張り切っていた。

ロゼもまた、文化祭を楽しみにしている。ただ一つだけ不満があって心から準備期間を楽しめないでいた。
マリエールが常に忙しそうにしていて、朝しか会えない。そのことが実に不満であった。

大体、マリエールは忙しすぎるのだ。
文化祭の実行委員になったと思えば、クラスの出し物にも手を抜かずに助力しているようだし、休憩時間は実行委員の会議だとか準備だとかで捕まらない。放課後はなんだか家のほうがごたついているとかで急いで帰ってゆくし、授業中はクラスが違うためなかなか会えない!文化祭の準備期間のため授業数もそんなに多くないので合同授業も無い!
それにせっかく一緒に登校できる朝のちょびっとの時間だっていつもより早足だし、なんだか疲れて見えるし。
文化祭直後にあるテストの勉強も、誘うほどの時間もない……。

マリエールに対しての不満なんて一つもないが、マリエールに会えないことにはとてつもなく不満があった。
でも邪魔がしたいわけじゃない。忙しい中でそれなりに寂しく思ってくれているのも知っている。疲れたら休んで欲しいけど、今はそれが難しいことだって分かっている。それでも、ロゼも、寂しい。

ロゼだってクラスの出展の準備もある。初めての文化祭だって楽しみだ。でもなんとなく物足りない気がした。
それが何故かは、まだ分からなかった。





大体一ヶ月程度の準備期間を終えて、今日が文化祭のその日である。
開催自体は一日だけのお祭り騒ぎに一ヶ月も準備期間を設けるのには理由があった。この日は父兄や外部の人間も自由に見学が出来る。
国に関係する機関や部署からの視察も入り、これをきっかけにスカウトされることもある。
そんな学生の将来にも関係のあるような重要なお祭り騒ぎに、ロゼはといえば。

クラスの出し物である喫茶店の呼び込み兼マスコット兼イルミネーション係りとして廊下に立っていた。クマのきぐるみ姿で。
右手には風船、左手には喫茶店を示す看板を持ったクマ、それがロゼであった。

「いらっしゃいませー!喫茶店やってますよー!」
「ごきげんよう。ずいぶん可愛らしい格好をしていますのね」

声を張り上げつつ片手間に教室の飾り付けを光魔法によって変えていると、昨日振りに聞く声がした。

「マリエールさん!こんにちは!実行委員お疲れ様です。見回りですか?風船いります?」
「そうですわ。ところで、わたくしこれから一時間休憩があるのですが、ロゼさんはいつから休憩時間かしら。少しでも被るようなら一緒に露天でお昼でもいかが?」

あと風船はいりませんわという声はもうロゼには聞こえていなかった。朝は実行委員で早いとかで時間が合わなくて会えなかったもやもやが全て吹き飛んだ。

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