ハーメルン
【完結】敗北者ユウリのワイルドエリア生活(6泊7日)
1日目~2日目(お客様:マリィ)
【1日目】
ブラッシータウンから電車に乗り、ワイルドエリアに入ったユウリは数日泊まれる分の食料を買い込んで、とりあえず人目につきそうにない場所を探した。
ワイルドエリアは広大だが、生息する野生のポケモンのレベルによって立ち入りやすい場所とそうでない場所がある。そしてユウリが選んだのはとびっきりの立ち入りにくい場所。
ここならよっぽどの物好きなエリートトレーナーでもない限り人と会うことはない。
げきりんの湖。そのほとり。
キラキラと太陽の光を反射して輝く静かな湖。
それを眺められる小高い丘の上で、ユウリはキャンプの準備を始めた。
暖かい日差しを浴びて、時折聞こえる鳥ポケモンや虫ポケモンの鳴き声をBGM代わりにしながら、ユウリはキャンプの準備をする。テントを建て、カレー鍋用の火おこしセットを用意する。折りたたみ式の食卓も立てる。
「エースバーン、ありがとね」
一通りキャンプの用意が整うと、ユウリは一緒に作業を手伝ってくれた相棒の頬を撫でた。エースバーンも嬉しそうに笑う。こういう素直なところはヒバニーだった頃と変わらない。
ユウリは旅を終えたあと、最初の相棒であるエースバーン以外のポケモンを全て預けた。旅の中ならともかく、6匹ものポケモンを世話するキャパシティはハロンタウンの自宅にはなかったし、そもそもバトルをする気が起きなかったのでたくさんの手持ちは必要なかったのもある。
少し疲れたユウリは立ち上げたハンモックに身体をのせ、ごろりと寝転がった。ゆらゆらと揺れている感覚が心地よい。空気はおいしい。人の声も聞こえない。
ここにいればお母さんにたたき起こされることもないし、スマホの通知が鳴ることもない。
ああ、静かでいい気分だ。
▼ ▲ ▼
【2日目】
次の日。天気は曇り。
好きなだけ寝まくって、ユウリはちょうどお母さんに怒られる時間であろう昼前に目覚めた。
身体がこの時間まで寝ていたら怒られることを覚えているのか、家にいなくてもなんだかんだで同じ時間に起きてしまうことにユウリは苦笑した。
テントの外に出るとエースバーンは既に起きていて、湖の浅瀬の近くで手頃な小石を使ったリフティングをして遊んでいた。
「エースバーン! おはよ! ご飯つくろっか!」
お腹がすいた。お昼のカレーを作ろう。
「ユウリ、ここにいたと?」
ユウリがエースバーンと一緒にお昼のカレーの準備をしていたとき、背後から人の声が聞こえた。
それは聞き慣れた友達の声だ。驚きはない。多分ここに最初にやってくるのは、彼女だと思っていた。
それにしても人に会わないようにここにきたのに、キャンプ2日目にして見つけられるとはちょっと残念である。せっかくの1人の時間が。ユウリは内心がっかりした。
「マリィちゃん、やほー」
「やほーじゃない。メッセージも返さんで、何かあったんかと心配したんだけど」
ユウリは明るく挨拶したが、マリィの表情は硬い。いや、あまり笑うこともない子だけど、それでもいつもより機嫌は良くなさそうだった。
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