ハーメルン
【完結】敗北者ユウリのワイルドエリア生活(6泊7日)
3日目(お客様:マクワ)

「ユウリ、あたしは絶対にあんたに帰ってきてもらうから。また来る」

 結局マリィちゃんはあの後も納得しないまま、そっけなくそう言うとまんぷくもようで満足したモルペコを連れて帰って行った。

 こういう時、どうすればいいのだろう。
 わたしにはまだ、答えが見つからなかった。
 

【3日目】


 今日は晴れ。でも大きい雲が流れていて、時々曇ったりして安定しない。

 ユウリがエースバーンと一緒に、昨日と同じように昼ごはんの準備をしていると、今日も人に声をかけられた。
 またか、とため息をつく前にユウリは疑問に思った。その声は聞いたことがあるようなないような、ユウリにとってあまり馴染みのない人物のものだったからだ。



 

「不思議ですか? 僕がここに来たことが」

 食事用のテーブル。
 それを挟んだ向こう側に座っていたのは、ここに誰か人間が来るにしてもユウリが全く想定していない人物だった。
 
 目立つ金髪に、特徴的な鋭角のサングラスをかけた恰幅のいい青年。

「えっ、いやそんなことは……マクワさん」

 ユウリはやや威圧的なその外見にややたじろぎながら答えた。

 キルクスタウンジムリーダー・マクワ。
 いわタイプを使う雪降る街のジムリーダー。ユウリにとってはかつてジムチャレンジの6番目の関門だった。
 
 バトルしたことはあるので、顔見知りではある。
 でも、それだけだ。ジムチャレンジで関わった以外、ユウリはマクワと話したことはない。当然ユウリに会いにマクワがここに来る意味もさっぱりわからなかった。

「いえいえ、大丈夫ですよ。あなたがそう思うことこそが僕がメッセンジャーとしてここに来た理由ですからね」

 マクワはあくまで紳士然と答える。スタイリッシュなチャラ男みたいな外見をしているが、マクワ自身は礼儀正しい男である。ファンサービスも良好で、新進気鋭のジムリーダーながらそのギャップからファンも多い人気者だ。

「メッセンジャー?」
「リーグ運営委員会の伝達係、という意味です。内容はおそらく察しているとは思いますが」
「ああ……」

 それだけでユウリは察した。トーナメントの招待をぶっちぎったせいでマクワはわざわざここに来たのだ。ほとんど話したことのないジムリーダーにこんなことをさせてしまってユウリはすこし申し訳ない気分になる。

「げきりんの湖まで安全に来られるトレーナーは限られます。なので必然的にジムリーダーの誰かが説明に赴く必要があったわけですが……まあマリィさんがあの調子なので、話が明後日の方向に向かず用件を端的に伝えられるであろう、ユウリさんと関わりが比較的薄い僕が選ばれたというわけです」

 なるほど、そういうことか。ユウリはマクワが来た理由に納得した。たしかに今のマリィちゃんとはまともな話にならないだろう。他の比較的交流のあるジムリーダーでも、昨日みたいに話が明後日に飛んでいくかもしれない。

「本来ならこういう役目はネズさんが適任でしょうが……ジムリーダーも引退してますし、妹のマリィさんがあなたと仲が良いこともありますからね。やりにくいだろうということで」
「ああ〜……たしかに……」

 ユウリは苦笑した。たぶんネズさんはこんなことめんどくさくて絶対やりたくないだろう。

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