ハーメルン
【完結】敗北者ユウリのワイルドエリア生活(6泊7日)
幕間(ダンデとキバナ)
バトルタワー。ダンデの自室。
チャンピオンが交代してからしばらく経ったある日、突然訪れたホップからダンデはぽつりとこう言われたことがある。
「アニキはさ、オレに負けた時悔しかったか?」
「……いきなりどうした? まあ、もちろん悔しかったが……今ではお前という弟を持てたことを誇らしいと思っているぞ」
ダンデは弟の突然の質問に一瞬怪訝そうな顔をしたが、ニッと笑いかけながらそう答えた。その表情に嘘はない。
ホップはダンデに勝った瞬間のことを思い出す。確かにあの時、アニキは帽子を深く被って一瞬表情を隠した。きっとその裏で悔しい顔をしていたのだろう。
でも、ユウリは?
『ホップ、おめでとう!』
ホップはチャンピオンになってから心に何か穴が開いた気分だった。3ヶ月前、自分に負けたユウリが浮かべたあの笑顔が頭から離れない。心からほっとしたようなあの表情。
ユウリのその反応を見て、ホップは素直に喜ぶことができなかった。
おめでとう。と言われる裏で、負けさせてくれてありがとう。勝ってくれてありがとう。そんな風に言われているような気がした。
隣で歩いていたと思っていたら、いつしか自分の遙か先を歩いていた幼馴染み。そして自分が1番勝ちたいと思っていたライバル。
ホップは思う。きっとオレはアニキよりユウリに勝ちたかった。だからユウリがそんなことを思っていると考えたくなかった。
そしてユウリはやがてスタジアムに姿を現すことはなくなった。いつも隣にいた幼馴染みの親友は、いつのまにか遠いところへ消えてしまった。
「ホップ……何か悩みでもあるのか? チャンピオンとしての仕事が忙しくて疲れているのなら、俺からリーグ委員会に仕事を減らしてもらえるよう口添えしておくが……」
何も言わずに暗い顔をしているホップの表情を見て、やがてダンデが心配そうに声をかけた。ガラルリーグチャンピオンはガラル地方のアスリートの頂点にして象徴である。たとえそれが子供だったとしても多忙であることには変わりない。前チャンピオンであるダンデはそのことをよく知っている。
するとホップは目を細めてダンデと視線を合わさないままぽつりと呟いた。
「アニキ……ユウリあいつ、オレに負けた時、笑ってたんだよな」
「ホップ、お前……」
ホップはどこか遠い目をしていた。ダンデははっとした。きっとこれは俺が今予想していたことで悩んでいるのではない。もっと根深く暗いものだ。そう、
か
(
・
)
つ
(
・
)
て
(
・
)
俺
(
・
)
も
(
・
)
同
(
・
)
じ
(
・
)
よ
(
・
)
う
(
・
)
な
(
・
)
こ
(
・
)
と
(
・
)
を
(
・
)
経
(
・
)
験
(
・
)
し
(
・
)
た
(
・
)
。
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