ハーメルン
【完結】敗北者ユウリのワイルドエリア生活(6泊7日)
【完】7日目(2)~30日後~X日目
「リザードン……ここはブラッシータウンの上じゃないか」
帰り道、空を飛ぶリザードンにダンデはしまったという顔で呼びかける。いかん、また迷ったのか。ダンデは思ったが、リザードンはチラリとこちらを見てただ頷く。
間違ってない。ダンデはハッとした。
ダンデの脳裏にソニアの顔がちらつく。今では本まで出版し、博士になったという。ダンデはふと気づく。お祝いは送ったが、最近会いには行ってない。その間にオレもチャンピオンを退いて、バトルタワーのオーナーになった。
10年前のあの頃からずいぶん時間が経ったように思う。あの時俺は目の前のことばかりに夢中でソニアを置いていってしまったけれど、今なら、もしかしてアイツらのように新しい関係を始められるのだろうか。
「リザードン……そうだな、会いに行こう。ソニアに」
ダンデはリザードンの背を撫でた。するとリザードンは機嫌良さそうに大きく咆哮し、一直線に研究所へと向かった。
今なら、昔みたいに笑顔で話せる気がする。
【7日目(2)】
時刻は11時を回っている。
いつもならちょうどユウリが起きる時間帯だった。
ダンデはカレーを食べ終わると、特に2人には大したことは言わずにリザードンに乗って帰った。
ホップはまた迷子になると指摘したが、それでもダンデは今日は絶対にまっすぐ帰れると言って聞かなかったので、そのまま渋々ユウリとホップはダンデとリザードンを見送ることになったのである。
ゆえに、いまこのげきりんの湖にいるのはユウリとホップだけだ。
テントの方では、空気を読んでエースバーンとゴリランダーが仲良く遠目で2人の様子をうかがっていた。
2人は湖畔に座って、無言のまま少し間を空けながら隣り合っている。
ユウリはげきりんの湖を見た。たまにポケモンが頭を出して波紋を作るだけで、危険エリアとは思えないほど静かに水を湛えている。
先に口を開いたのはホップだった。
「ユウリ、その……」
「うん」
「……ごめん。あんな風にユウリの名前を出したのは、流石にやりすぎたぞ……。オレもまさかこんなことになるとは思ってなかった」
ホップはまずユウリに謝った。例の公共電波私物化の件である。これについてはユウリも内心腹が立っていたので、頬を膨らませてホップの顔を見た。
「ほんとそうだよ! ホップがあんなことするからわたし1週間もワイルドエリアにいなきゃいけなくなったんだからね。このままじゃ野生のユウリになっちゃうじゃん!」
「ほんとごめん」
ホップはただただ申し訳なさそうに身体を縮めた。そんなホップの様子を見ているのは少しだけ面白い。ただそのおかげで自分にとって大切なことを学んだことも事実なので、ユウリはそれ以上追究することはなかった。
「まあ……それについてはもういいよ。それよりもホップさ、わたしに言いたいことがあるんじゃないの?」
何気ない調子でユウリは続ける。ホップの顔が少しだけ強ばった。きっとホップはわたしに言いたいことが沢山あるんだろう。いったい何から言うのかはわからないけれど。
少しの沈黙。
おもむろにユウリはそばに落ちていた小石を湖に投げた。ぼちゃん。と音がする。はよ言え。
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