ハーメルン
FAIRYTAIL-イストワール・オブ・レイチェル-
17.「それぞれの出陣」

別の日。何も知らないスティングとローグはレイチェルの様子を見に来た。
レオンから彼女が目を覚ましたことを知らされたのは依頼から戻ってきた
後だったのだ。

「元気かー?レイチェル…うおっ!?」
「どうしたんだ、そのメイド…」

レイチェルの部屋の中を右往左往するメイド服を着た女性たち。
全員人形だ。メイドだけでなく看護師たちまで中を右往左往している。

「長い期間、まともに動いていなかったからな。もう少し、身の回りの世話が
必要になる。それに少しずつ体を動かしていくこともな」
「お前、いつの間にここに入ってきたんだよ」
「窓からだ」
「正面からは行って来いよ!?」

ギルドマスターは堂々と不法侵入まがいの行為をしたと言い放った目の前の
人形師アランに呆れた。

「アルバレス帝国」

アランは静かにその名を口にした。

「その最高戦力、スプリガン12。そして皇帝スプリガン…否ゼレフ本人は
現在このフィオーレに進軍している。目的は妖精の心臓(フェアリーハート)

スティングたちは分かっていないが、レイチェルとレオンはそれを知っている。
初代ギルドマスターであるメイビス・ヴァーミリオンの本体ともいえる
体があるのだ。

「皇帝がたった一つのギルドから宝を奪うためだけにデカイ軍隊を動かし
フィオーレ王国に宣戦布告してきやがった。アンタも呼ばれてるんじゃないのか。
レオン・マクガーデン」

レオンは溜息を吐いた。

「どんな手を使った?」
「ちょっとばかし、そっちのマスターに話を聞いてね。言伝を頼まれたのさ」

アランは追い払うような動作をする。

「ちゃっちゃと行けよ。聖十、お前はもう四天王なんだろ?ンでもって、
空席となった第一席に座す史上最年少の四天王」
「第一席ッッ!!?」

アランは言ってやったと、ドヤ顔を。レオンは更に大きな溜息と苦笑を。
レイチェルたちは目を丸く。彼が出かけた…出陣した後。彼等もまた
戦争に赴く。

「お前は待て、レイチェル」
「え?」

引き留められたレイチェルは首を傾げた。人形たちは必要最低限しか今は
存在しない。

「この女、こいつがメイビス・ヴァーミリオンだな?全く、どいつもこいつも
俺を言伝係にしやがって…」

アランは頭を掻いた。彼も大変だ。マカロフとメイビス、二人のギルドマスターに
こき使われているようだ。メイビスの言伝を聞いてレイチェルは驚く。

「死ぬ気だな。この戦争で」

まるで遺書のような言葉だった。
それは一言一句間違えてはいない。

「私も戦わなきゃ…!」
「そのまま行くつもりか?まだ休んでいた方が良い。本当にピンチになったとき
現れてこそ…そうは思わないか?」

アランは歯を見せて笑った。それにレイチェルも笑って返した。
彼女たちが本格的に出陣するときは確かに彼らが追い詰められた時であった。
極寒の北方、霊峰ゾニアから吹雪が消え花が咲き乱れたときだ。

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