第12話 朱殷ー弐ー
ーーーー成領中学校 職員用男子更衣室ーーーー
生徒の間で噂されている話はないか。
そんな私の質問に、今日同僚になった若い女性教員2人はホイホイと答えてくれた。
顔がいいって得だねぇ。
2人によると、例の『赤マント』のことは生徒の間でこう噂されているそうだ。
新学期からここ2ヶ月で、生徒が貧血で倒れるという事件があるそうだ。
被害にあったのは女子生徒3人。
いずれも特別教室がある通称特別棟のトイレの近くで倒れていたらしく、首筋に火傷のような痕があった。
「そして、3人中2人がテニス部……うん、情報通り」
「それに3人全員が長月ちゃんと同じ2年生」
窓からの報告とも合致する。
しかし、気になるねぇ。
「どうも作為的なものを感じる」
被害者が偏りすぎている。
『赤マント』は学校の怪談的な要素も含んでいるから、特に負の感情をもちやすい中学校で発生するのは分かる。
『赤マント』の起源を考えると、女子生徒が被害に遭うのも納得のいく話だった。
けれど、学年や部活まで限定する呪いなんていうのは聞いたことがない。
自然発生の呪いならば、だけどね。
「……証拠はこれだ」
鈴木と書かれたロッカー。
そこにハッキリと残穢が残っている。
確か、この教師はテニス部の顧問だったね。
……ただ長月ちゃんの手札を増やすための任務だったけど。
「ふふふっ、楽しくなってきた」
ーーーーテニス部部室ーーーー
練習終わり。
僕はテニス部の部室に招かれた。
1年生はコートの片付けをしているようで遅れてきたけれど、ここには11人全員が揃っている。
制服に着替えた後、ふと気づく。
それぞれの学年で制服のネームプレートの校章の色が違うから分かった学年構成。
3年生が部長を含めて4人。
2年生が佐藤さんを入れて4人。
1年生が3人。
「……3人?」
確か球拾いをしていたのは4人だったから、1年生は4人だと思ったんだけど。
そう思い、2年生の顔を見渡すと……いた。
球拾いをしていた娘だ。
端で静かに着替えている最中だ。
「…………」
「それでそれで!」
僕の様子を察しない2年生3人が僕に色々な質問をぶつけてくる。
それを流しながら、僕は端の彼女の観察を続ける。
決して不細工な訳ではない。
ただ表情が暗いからか、どうも陰気臭く感じる。
……まぁ、僕が言えた義理じゃないんだけどさ。
さて、少し確認してみよう。
「…………」
その彼女を注視する。
……うん、予想通りだ。
彼女から、濃い残穢が残っている。
接近、してみるか。
ちなみに2年生の質問責めは練習後30分は続いた。
……きつかった。
ーーーー昇降口ーーーー
「長野さん」
あの後、部室の鍵を職員室に置きに向かった彼女を昇降口待つこと10分ほど。
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