第17話 両面宿儺ー壱ー
ーーーーーーーー
新幹線内での呪詛師の襲撃から一時間後。
僕たちは東京駅内の土産物屋にいた。
「で、どういうことですか?」
「あの呪詛師は『破裂』の術式持ちだろう。空気を破裂させ、見えない弾を打ち出していたようだよ。特別な眼がある訳じゃないから推測の域は出ないけれどね」
「そっちじゃなく」
僕が聞いたのは新幹線内で拘束した呪詛師のことではない。
勿論、そちらも気にはなるが。
「今回の任務……僕の護衛って方ですよ」
「あー、んー……そうだねぇ」
僕との会話より土産物に夢中な様子の針倉術師。
この人、答える気なさそうだ。
「……紡ちゃん」
「はい、説明は私からします。針倉さんはあんなですから」
土産物屋から出て、彼女から話を聞く。
新幹線の中では戦闘でそれどころじゃなかったから、初めて聞かされる今回の任務の内容。
簡単に言えば、『両面宿儺の指』を高専に引き渡しに行くこと。
それと僕を高専へ送り届け、ある一体の呪霊を取り込ませること。
そのために僕を護衛する、らしい。
……ん?
「ちょっと待って」
「……流石に、気づきますよね」
話を遮った僕の様子で、紡ちゃんは察してくれたようで、ため息を吐きながらも答えてくれた。
「普通だったら護衛なんて必要ありません。長月ちゃんが狙われる理由なんてないですから」
「でも……これを見てください」
そう言って、彼女は操作したスマホの画面を見せてきた。
とあるホームページ。
そこには、
「僕の名前と顔写真……?」
「このホームページは……呪詛師がよく使う闇サイトだそうです。懸賞金もここに」
「……100万」
僕を殺せば100万円。
いや、生かしたまま誘拐が条件か。
身代金にしては思ったよりも安い金額だな。
「ターゲット、つまり、長月ちゃんが高専に着くまでという期限付きですが、それでも呪詛師は動きます」
「任務の情報って簡単に知れるものなの?」
「そんなことはありません。ただ……ここにある情報には、本来知りえない長月ちゃんの術式の情報……今使える呪霊についても書かれてるんです」
「…………」
任務を出す側、恐らく高専内に内通者がいるってことか。
それはまた面倒な……。
「楽して儲けたい奴らばっかりだな」
僕の苦言に少し申し訳なさそうな表情をする彼女。
しまったな。
そんな顔をさせるつもりじゃなかったんだけど。
「ともかくだ。内通者はひとまず他に任せるとして問題は2つか」
1つ目は僕を誘拐するためにやって来る呪詛師の対処。
これは……まぁいい。
こちらには、対呪詛師なら負けはしない紡ちゃんと準一級呪術師がいる。
そう簡単にはやられはしないだろう。
それに僕自身も少しは抵抗できるし。
2つ目は僕を狙う黒幕の真意が分からないこと。
こっちの方が問題だ。
[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/2
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク