ハーメルン
呪詛師殺しの僕(完)
第2話 呪術師

ーーーー菅谷家ーーーー



「いいお部屋ですね」



例の帰り道の一件の後。
僕は、彼女ーー狗巻紡(いぬまきつむぎ)を部屋に上げていた。

ばあちゃんからは友達を連れてくるなんて珍しいと驚かれてしまった。
そもそも自分の部屋に人を上げるつもりもないし
ただあの場で解散ともいかないだろうし……。


「長月ちゃん」

「……名前、なんだね」

「?」

「いや、なんでもない」


急に下の名前で呼ばれるとは思わず、感じたことを口にしまっていた。
転校前のクラスメイトからですら、さん付けだったし、つい反射的に。
反省しなくては……。
警戒、しなくてはならない。
なぜなら、さっきの彼女の発言からなにやら不穏な気配を感じ取っていたから。


「それで、狗巻さん」

「つむぎ、です」

「…………紡さ、ちゃん」

「はい、なんでしょうか?」



「さっきの件なんだけど、僕を監視ってーー」



「でも、なんだか不思議な感じですね。長月ちゃんの部屋ってもっと……うーん、なんて言うんでしょうか」

「…………」


なんだろう、この感じ。
調子が狂う。


「……なにもないと思ってた?」

「あ、はい。あっ、気分を害してしまっていたらすみません」

「まぁ、いいよ。自分でも意外だし、こんなもの集め出したのもーー」



「あっ、そうでした。監視の話でしたね」

「……うん」



……僕、この娘苦手だ。
そんな僕の気持ちとは裏腹に彼女はしっかり話を進める。

うん、切り替えよう。
本題だ。



「さて、長月ちゃん。監視の話の前に前提として知っておいてほしいことをお話しします」

「長月ちゃんは『呪い』って知っていますか?」



ーーーー説明ーーーー


呪い

日本国内での怪死者・行方不明者は年平均一万人を超える。
そのほとんどが人の負の感情から流れ出た『呪い』によるものだ。
特に学校や病院、大勢の思い出に残る場所には呪いが湧きやすい。
人間が後悔や辛酸、恥辱といった記憶を思い出す度に、その受け皿になるものだからだ。

そんな話だった。


ーーーーーーーー



「信じなくても構いません……といつもなら言うところですが、心当たりがあるはずです」



「長月ちゃん」

「貴女、呪いを視認できますね」



「…………」


沈黙。
それが答えだった。
昔の僕であれば、あり得ないと返していただろう。
けれど、僕の左肩に張りついていた『アレ』を見てしまったから。

……いや、違うか。
『アレ』だけじゃない。


「こちらで調べたところ、昔から見えていたわけではないんですよね」

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