ハーメルン
D.T 童貞はリアルロボゲーの世界に転生しても魔法使い
革新的試作兵器【パンジャンドラム・AA】

この世界でホッパーとして、曲がりなりにも一人前と自負出来るようになった頃。ふとゲーム時代のバグや仕様の穴を突いたらどうなるのか試した事がある。

例えば、二段斬りバグ。
DTで跳躍後、着地寸前で近接武器の攻撃に成功すると空中と地上の当たり判定が連続して発生し、多段ヒットする技だ。
これをチェイサーで試したところ……まさかの成功。操作は一回分なのに二回斬り付けた跡が残った。
当時は無双系主人公になれるのではとウキウキしたが、すぐさま画面に表示された《右腕部破損:50%》のメッセージで正気に戻る。
無理な超高速で往復稼働したらしく、負荷に耐えられずに自損したのだ。

他にも、障害物を通過する壁抜けバグは該当箇所が手抜き工事で異様に脆くて破壊出来たり、明らかに弾倉のサイズより弾数が多い設定ミスのような銃火器は隠れた位置に予備弾倉が設置されていたりと、要因は様々だが概ね《この世界とゲームの仕様はリンクしている》という結論に至った。
もっと考察や検証を重ねて謎を解き明かしたいと思っているのだが、二段斬りの一件や加速バグで玉突き事故を起こしたりと、修理その他のお金が馬鹿にならず作業は中断を余儀なくされている。

しかし、前世で趣味としていたRTA(リアル・タイム・アタック)の経験から、D.T:Ⅱの仕様は隅から隅まで把握済み。機体挙動やホッパーの特徴は勿論、武器毎の特性やクエスト関連の周辺地理もバッチリ頭に入れてある。
…残念ながら恋愛シミュレーションパートだけは、基本早送りだったのでキッチリとした詳細までは覚えていないが、まぁ良いだろう。

何はともあれ、一番大事なのはゲーム時代の知識がこの世界でも存分に活かせるという事だ!



「こんな程度で…破れかぶれも大概にしな!」

ザボンッという盛大な水飛沫と共にモーラのシュバルツと俺のチェイサーが、水かさの増した川へと沈んでいく。
いくら踠いても一向に抜け出せない現状に苛立ちを募らせるモーラは、がなり立てながら抵抗するが抱き着いているチェイサーが動く様子は全くない。

そう、ほぼ全ての面でシュバルツに劣る旧式のチェイサーだが、唯一勝っている自重で押さえ込めば動きを制限出来る。不意をつく為、炸裂ボルトで【闘士形態】の外装をパージしたので重さが足りるか心配だったが、どうやら杞憂に過ぎないようだ。…やっぱりSUMOUは最高だぜ!
そして持ってて良かった応急処置パック。【剣士形態】の標準装備で、エール式の自動修復ならぬ手動修復によって破損箇所の魔力漏れを最低限に抑える事が可能。いわゆるスリップダメージの回復になる。
もしこれが無かったら、本気を出したシュバルツに《この戦法》を持ち込んだとしても勝つのは難しかっただろう。

「そんなオンボロに勝ち目は無いってのに無駄な真似を…!」

いいや? 既に勝敗は決している。

モーラには悪いがこれ以降、あり得ない程の不運やミスが起こらなければ、俺の勝ちは揺るぎない。彼女は既に敗北への一歩を踏み出してしまったのだから。

[…河童を…知っているか]
「はぁ!?」
[…ニホンの…妖怪で…水辺で…人を…引き摺り…沈める]
「だからどうしたって言うんだい!」
[…水辺…川…今…この場所は]
「……は? ………あ、あ……ああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

周囲の光景が改めて目に入ったのだろう。顔面蒼白になって叫んだ。

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