第12話 変化した日常
「──という訳で、人は”魂”、”精神”、”肉体”という三要素によって構成されている」
最近、私の周囲の環境が少々変わってきている。
カリーナ教諭が事あるごとに私に構いに来て、それに負けじとレイカ様が張り合うように構ってくる。
更にミスズ様がそんな私たちの様子を見に来て意味不明な言葉を伝えてくるのだから本当に意味が分からない。
他の生徒たちも「どうしたどうした、何か面白そう!」とニヤニヤしながら私を見てくるのだから、これは控えめに言っても大分目立っていた。
もうその辺りはいいや、と諦めている私は相変わらずである。
というのも、レイカ様の態度が劇的に変わった。
これは私に対してだけでなく、他人に対してもである。
具体的に言えば、人当たりが随分と柔らかくなった。
以前までであれば、威圧感を周囲へとバラ撒いていたのだが、最近ではそんな雰囲気をとんと見ない。
普通に喋り、何なら調協性すら見える。
何があったのかと一時期驚いたが、恐らくは自称姉上から聞いた話によるものだろう。
そんなこんなで、最初は豹変したレイカ様にビクビクとしていたクラスメイトたちも、今では彼女の軟化した態度にすっかりと慣れたようである。
私の様子をニヤニヤと意地の悪そうな笑みを浮かべて観察するくらいにはレイカ様もこのクラスに溶け込んだらしい。
悪いか悪くないかの二択で言えば、レイカ様の変化は決して悪くない。
ただ、渦中にいるのが私だと言う事が素直に喜べない最大の要因である。
「カオルさん、本日のお昼はどうされるおつもりで?」
現在は魔法学概論の授業中である。
そんな事など知らんとばかりに私へと話しかけてくるレイカ様に、私も段々と慣れてきている現実が少し恐ろしい。
「人が死んだ際に魂と精神は肉体から離れ、いずれ精神は消滅し魂は輪廻へと還る。また、魂は時空を超越し過去にも未来にも向かう。どこかで見た事、聞いた事がある、いわゆるデジャヴュというものは魂に刻まれた記録の断片であり──」
そんな私たちの様子に気付いているのかいないのか、教壇に立つお婆ちゃんは話を続けていく。
「精神は自我を持ち記憶を宿し、魂は信念や執念を持ち記録を宿す。魂と精神は相互に干渉しあい、経験が精神に与えた強い影響は信念、執念として魂に刻まれる。そのため、特に強い信念、執念は転生した後の現世の精神に強い影響を及ぼす事がある」
魔法の強さへ精神が及ぼす影響は強く、精神へは魂が及ぼす影響が強い。逆に印象に強く残る経験をした精神は魂へも影響を与える。
そのため、魔法理論を解読するためには魔法学的な人の構造を理解していなければならない。
つまり、今はそれなりに重要な説明がされている訳である。
「いえ、今日は特に」
「ならば、本日も共をしなさい! な、何故か今回もお弁当を作りすぎてしまいましたの!」
[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/4
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク