第1話 最悪の出会い
「あなた、本当は男の子とか、そういう事ってあったりするかしら?」
……なんでバレてんの?
レイカ様に呼び出されついていくと、そこは人気のない裏庭だった。
向かい合うように佇んで暫く無言の時間が続いた後、レイカ様は開口一番にそう口にした。
「どうしてでしょうか?」
動揺を悟られないように怯えた顔をする。
この程度のポーカーフェイスなら朝飯前だ。
例え何か私の正体に疑問を持っていたとしても、この態度を貫き通せば相手も動揺するはず。
その反応によって、どの程度の確信を持っているかも分かるだろう。
しかし、何か証拠でもない限りは私としても自分の性別を偽っているなどと認める訳にはいかない。
なお、証拠を持っていても抹消した後にお嬢様には記憶改竄の処置だ。
自分としては学園内でそこそこ上手く対人関係を築けている方だと思っている。
昨晩はイレギュラーであったが、流石に諜報部も失態の上塗りをするべく記憶改竄に手を抜いたとは思えない。
ならだ、何故私を男の子だと思ったのか。
その原因を突き止める必要もあった。
「カオル=リヒテンバウアー。15歳。身長149cm、体重42kg。父が共和国人、母が帝国人のハーフで国籍は帝国。幼い頃に父を亡くして以来、帝国子爵である母との母子家庭で育つ。姉妹もおらず、子爵家の跡取りとしての研鑽を積むため、遠く桐桜学園へ入学し現在寮暮らし。成績並み、運動神経並み。外見が男性らしい事から皆のマスコット的扱いを受けている。それ以外は特に特筆すべき点のない一般生徒」
私の質問には答えず、レイカ様は流れるように私のプロフィールを歌い上げる。
まあ、合っているのは年齢・身長・体重くらいで殆どがこの任務のために作り上げた偽の情報なのだが。
よくここまで調べたものだ。素直に感心する。
昨晩は記憶の処置もあって起きたのは今朝方だろうから、日中で集めた情報だろうか。
いや、無理だな。
レイカ様に護衛がつけられている事は公爵家当主、レイカ様の母上にはご報告済みである。
ただし、私の性別やら何やら護衛官の情報は伏せられている。
例え公爵様と言えども誰の口から情報が漏れるか分からない。
通常は学園の警備兵や諜報部が管理している案件なのだ。私のところまで仕事が回ってくるのは、それだけ敵が狡猾かつ優秀という事だろう。
それゆえに最終防衛ラインである護衛官が誰であるかは出来るだけ余人に知られてはならないのだ。
それだけ”聖女”という存在は帝国にとって重要な存在であり、他国にとって邪魔な存在だった。
話を戻そう。
つまり、レイカ様がご実家の力を使って私を調べ上げようとしても公爵様に止められる可能性が高い。
当たりだった場合、公爵として立場的に困るからだ。
それ抜きにしても、何か特別な理由でもなければ学友の個人情報を調べるなど親なら止めるだろう。
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