忍法・ヒロイン奪いの術
なんやかんやあって、俺たちはサイボーグの撃破に成功した。
もう少し詳しく説明すると、ヤツは門番のように支部の入り口の前に立ち塞がっていたのだが、衣月が投擲したクナイを俺と風菜の風魔法で超加速させた結果、サイボーグの頭部を粉々に打ち砕いて勝利した──という流れだ。衣月はあらかじめ音無からクナイを一本持たされていたらしい。
しかし勝利の喜びも束の間。
どうやらサイボーグは量産されていたらしく、この組織支部のいたるところに配置されていることが分かってしまった。
割と苦労して倒した敵だっただけに、そいつが量産型の内の一体だということが判明したときの落胆も大きかった。
だが風菜と衣月の励ましによって再起し、とりあえず先に仲間の解放をしようということで、風菜に衣月を任せて二手に分かれ、俺は怪しげな地下のほうへと降りて行った。
そこで見つけたのは──
「…………コク」
大きな廊下で、燃え盛る炎の剣をその手に握ったレッカが、脱力したように立ち尽くしている。
その周囲には木っ端微塵に破壊され尽くした、あのサイボーグの残骸が散乱している。
燃えた痕跡や廊下中に漂うコゲ臭い匂いから察するに、これはすべてレッカが片付けたものなのだろう。
……えっ、なにこれ。
覚醒イベントか何か?
「レッカ、これは」
「見ての通りさ。皆を処刑させないために、すべて僕が倒した。どうやら在庫はまだまだ残ってるみたいだけどね」
いやいやもうこの際、サイボーグの残存兵力だとかはどうでもいい。
あの、れっちゃんが異様にクールな男になっちゃってる方が不思議でならないんですけど。
てか起きてるし。あの催眠状態から自力で覚醒したのか。
「きみのおかげだよ、コク」
「私……?」
「僕はアポロとの日常という夢に囚われていたんだ。とても心地良くて……平和な日々だった」
催眠状態のときはみんな夢を見せられてたらしい。ありがちな夢の世界ってやつだな。
でも、何でよりにもよって俺との起伏のない日常が夢なんだろう。
そこはヒーロー部の女の子たちとアレコレする最高のハーレム桃源郷じゃないのか?
まったく夢がない奴だな、どんだけ俺のこと好きなんだよ。照れるからやめれ。
「でも、きみの存在が僕に違和感を与えてくれた。親友を奪ったキミがいたからこそ、僕は怒りで目を覚ますことができたというワケだ」
あれ、今ちょっと不穏なワードが聞こえた気がするんだけど、気のせいかな。
「夢なんかで満足したりはしないよ。僕は僕のあるべき日常を取り戻すつもりだ」
「レッカ……」
やばい、怖くて一歩下がっちゃった。
しかしそれを縮めるように一歩俺に近づくレッカ。持ってる武器の剣先が床を削って、嫌な金属音を立てた。
「コク」
「……ッ!」
全身から殺意が溢れ出てるんですけど。
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