01.一族
『各地における“死”の伝承』 ブリジット・キンブリー
……“死”はあらゆる地域の民話に登場する。前章ではマグルの学者ラカン、ユングを取り上げマグルの死の認識を具体化した。本章取り上げるのは『吟遊詩人ビードルの物語』より『三人兄弟の物語』である。
『吟遊詩人ビードルの物語』はイギリスで広く親しまれているが口伝、または口伝に基づく書籍化により現行出版されているものは原本と大きく異なる。
そこで原書を所有するアルバス・ダンブルドア氏に写本を頼んだところ快く了承していただいた。以下はダンブルドア氏によるルーン文字からの翻訳である。
(中略)
このように、魔法使いにとっての“死”は恐怖と畏怖の対象であると同時に、おそらく唯一残された、魔力を超越する“神秘の力”なのだ。“死の秘宝”が信じがたい力を持っているのも我々が死に対して“抗い難い力”を感じ取っているからだ。
生き物は皆死ぬ。マグルも魔法使いも必ず死ぬ。死からは逃れられない。
神秘部とは研究機関である。分野は“時”“運命”、そして"死"だ。
“死”に関する研究は最も古く、そして最も秘匿されている。まず、現在のイギリス魔法省の庁舎は最深部に存在するアーチを保護するために建てられたことからもそれは窺い知れるだろう。アーチは“死”に繋がっているとされている。かつて何人もの魔法使いがそのアーチをくぐり、そのまま帰ってこなかった。
あのアーチ同様に死の世界へ繋がる遺構は全世界に複数存在する。筆者が参加したのはそれらの遺構発掘調査であった。
シュオル、ゲヘナ、地獄、ニライカナイ。様々な名前で呼ばれる場所の中心地点はほぼすべての場所で時間の停止、遅滞が確認されており、魔法生物、植物の群生地にもなっている。また太古の魔術が未だ息をしているらしく無言者のみでは対処不能故に呪い破りが同行していた。
私が呪文破りとしてはじめに派遣された地は【黄泉平坂】と呼ばれていた。そしてアクトゥン・トゥニチル・ムクナル、ネクロマンテイオンにも赴いた。どこも気候の影響を受けず、疲れも飢えも渇きもない静止した時の中にあった。
あのアーチと違う点は、それらは自然に存在するということである。つまり逆説的に、イギリスのあのアーチは人工的に作られた門である可能性を示唆している。現にアーチ周辺では時間に異常は起こっていない。
つまりはるか昔、私達の知り得ない過去。魔法使いはあちらとこちらを行き来することができたのだ。
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