04
つくづく思う。
最大の敵はメタルイーターなどというカビ……でもあるのだが、冬はやはり食糧確保と保存の困難さこそ大敵であると。
「ランディさんどう? やっぱり、解析は難しい?」
農作物も期待できないのであれば。不味いキツネの肉に頼るしかなくなる。
一応それなりの食糧は確保できたもののキャンプの住人には多少の不安が残っているものの、今にアタシにはそれどころではなかった。
「うん。完全に僕にも分からない領域だ。ここの部品とか、金属同様に通電性があるみたいだけど素材が全く分からない。プラスチックのようだけど……」
「基本的な部品はセラミック?」
「あぁ。それも僕の知らない技術で作られている。かなり頑丈だし軽量。いや、なによりもかなり熱に強い」
あの時、空から落ちてきた機械。
あの忌々しいピンクの輝きが一切なく、しかもついさっきまで稼働してただろうソレを、アタシは誰にも見られない様にバックパックの底の方に隠して、たまたま発見したシカを仕留めた後は諸々の処理を終わらせて急いで帰って来たのだ。
「この……なんだろう、硬くて小さな丸いガラスを張った部分は。それに蜘蛛みたいな足も付いている。地面を歩行? いや、物を支えたり、どこかに取りついたりする物か? バッテリー部らしき部分は完全に未知の物……いや、所々で使われているプラスチックの様な物と同じなのか?」
元々自分に近い考えを持っていたランディだ。
こうして最近稼働していた『文明の臭い』を、皆に隠したまま話に乗ってくれる。
「古い物……なのよね?」
「おそらく。だが、メタルイーターへの対策がされているのは間違いないだろう。拭った跡があるが、細かい所に埃が残っている。これだけの埃が積もる程の期間を経て、あのカビに食われず稼働しているということは……いやはや、まさかこんなものを見れるとは」
より強靭なセラミックを作るためには今の物よりも高温に耐える事が出来て、かつ複雑な工程を可能とする素材や技術がないと難しいとランディさんは言っていた。
今、まさに目の前にそのヒントがあるのだ。
「これ、どこから飛んで来たんだろ?」
「飛ぶ所を見てはいないのかい?」
「うん……。上のほうで、なんか細かい羽音がするなぁって思ったら、多分木に引っかかってドサドサーって」
「なるほど、バランスを崩したのか。この羽根の部分に木の葉が付いているし……だが傷らしい傷がまったく付いていない。恐ろしい強度だな」
「手入れ頼んでるナイフよりも?」
「あぁ。今の所アレが僕が出せる最高硬度だけど、これはそれ以上に硬いし軽い。繰り返すが、本当に大したものだ」
もし。
もし、だ。
これと同じものをたくさん作れればこれまで以上に頑丈な物がたくさん作れる。
熱に強いのならば、炉だってこれまで以上の高温を出せるかもしれない。
建物すら作れるかもしれない。
いや、セラミック以外の部分を解析して自作できるようになれば――取り戻せる。
かつての――文明を。
「これを作るだけの力が残っているのならそのうち接触してくるか、そうでなくても落としたこの機械を回収しようとするはず」
こんなご時世だ、貴重なモノに違いない。
ならば、探しに来ないハズがない。
[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/3
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク