ハーメルン
(旧)娘が悲劇の悪役令嬢だったので現代知識で斜め上に頑張るしかない
13)風の限界を超えて行け
「凄い、凄いぞ公爵様!
こんな、こんなに速く飛ぶモノなのか、飛行機とやらは?」
「わーけっこうはやーい。
こんなに大きいのに不思議~!」
「がはは、コイツぁ結構ご機嫌じゃねぇかぁ!」
「……喜んでくれてなによりだ」
飛び出してすぐ、重力抵抗も無視して飛ぶこの巨体ガジェットは、乗りこんだ者達の心をひとまず掴めたようだ。
おお、さっきまでモニョモニョしてた水の子まで復活したわ。
やはりいつでも俺を助けてくれるのは技術と娘の2つのみ。これでハッキリ分かんだね(親バカ)
さてこの試作戦闘機1号君。
2機の専用重重力機関から吸い込んだ空気を、大型ギアに内蔵させた数多のファンで加速させて圧縮噴射させるコイツは、機体重量が0な事もあり、実際かなり高速で飛ぶ。
速度計測してないから分からんが、だいたい時速で500~700km位は出てるんじゃないかな。
さらにファン内蔵の大型ギアを横として、それらはその左右に配置された同じ数の縦軸ギアと噛み合っており、本来重重力機関の欠点である、大地とギアが水平になったら動かなくなるという弱点をちゃんと補った作りとなっている。
そのギア動作の切り替えはあのゴーレム君だ。
ゴーレム君は一桁の計算が出来るだけでなく、それが複雑でなければ物事を直接見て、命令に従った動きをしてくれる万能魔道具なので、この手の“目の前の物が動かなくなったら”別のスイッチを入れる、なんて動作は簡単にこなせる。
だからソイツを利用して、重重力機関がいつでも最適に落下エネルギーを取り出せるように重力制御を自動化し、縦横ギアの動作すら制御させたのがこの専用機関というわけだ。
いやぁイルマ君、本当に優秀な人だわ。
飛行機作りの為に親方と顔合わせさせたら、どっちも別分野で腕がある職人だから衝突しないかな? と心配したが、会ってすぐお互いに自分の作った物を見せあって、
(無言で握手)
秒で打ち解けあった時は、流石に笑えた。
ホンモンの職人には言葉はいらないんだなって、学んだわ。
さてそんなウチの技術の結晶なのだが、機体が高速安定してからしばらく。お嬢さん二人には十分受けているようだが、どうにもギドリックの食いつきがイマイチだ。
後部座席確認用のバックミラーを覗くと、“思ってた程でもねぇな”って顔に書いてある。
実は予想通りの反応だった。
「何か不満でもあるのかね、ギドリック?」
「おう。こいつなんだがよ。
こういっちゃ何だけどこう、未知っていうには違くねぇか?」
「えー、そうかなー?」
「なんでですか叔父様! 風魔法の力を使わず、こんなにも速く、高く飛べているのに。これが未知の技術でなくて、何が未知だというんです!」
「いや、まぁそうなんだろっけどなぁ……」
全然納得出来てないって顔だな。いや、そうであってもらわないと困るんだ。だってアイツを叩き伏せられなくなるだろう?
だから俺はこれからアイツの、その不満を直接突く。こういう時、魔王モードはとても便利だ。
何せ煽る事しか出来ないからな(震え声)
「くく、物足りんかねギドリック?」
「まぁな。
言ってみればコイツ、俺やソランより遅ぇじゃねぇか。そりゃ国の連中でもこの速度で飛べんのは、わずかだけどよ。
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