ハーメルン
(旧)娘が悲劇の悪役令嬢だったので現代知識で斜め上に頑張るしかない
6)その時、騎士団は驚愕した
親方とのエンジン談義から10日程経った頃。
俺は騎士団の鍛錬場の中にいる。
多くの騎士たちが不思議な顔で見守る中、俺はソイツのお披露目を始めた。
「では諸君。これから我が国を守る、君たちの新しい力をお見せしよう」
言って。ソイツに乗り込んで鍵代わりに重力魔法を通し、始動させる。とたん、エンジンというよりもモーターである新型重重力機関が静かに高速で回り始め、発進の準備を整えた。
「いくぞ」
「「「「おおぉぉぉ!」」」」」
俺がそう一言いうと、重力魔法でソイツの重さを軽くしながらアクセルを踏む。
すると、その
石
(
・
)
の塊が動き出す。
ソイツは段々とスピードを上げ、馬上訓練も出来るその広い訓練場の内周を走破していき。
「な、なんという速さか」
「あのような出来損ないの石の馬車にしか見えんようなモノが」
「確実に馬より速いぞ、アレは!?」
その途中で掲げられた攻撃目標のワラ薪に向かって、コイツの目玉である自動巻式城塞用バリスタで狙いをつけて。
俺はそこを走り抜けながらその大きすぎるバリスタの銃身を動かし、車体の右方向へと向けて連射した。
「な、立ち止まる事すらなく!?」
「なんだあの速さ。あんな短い間に何発撃ってるんだ?」
「城塞用の3人巻きが、なぜあんな速度で撃てる……」
止まること無く瞬時にワラ薪をズタボロにしたソイツは、再び騎士達の前に姿を現す。
そこでブレーキを踏みながら、かけた重力魔法を薄めていくと、ソイツは増えた自重も手伝って緩やかに止まった。
「「「「「あ、あ、あ、あ、あ」」」」」
皆が皆唖然の表情。
そりゃなんか石を城壁ごと切り出したような、無骨なフォルムの車輪付きの謎装置が馬すら超える速度で走りゃあ、驚くだろうよ。
「これが君たちの新たな騎馬の一つ、名を自動車という。
喜べ諸君。もう重力騎士が鈍重と言われる時代は終わったぞ」
「「「「「うぉぉぉぉぉぉ!!」」」」」」
堂々と騎士たちの前で宣言してやった俺。
ああやっぱ脳筋には、技術は見せるより魅せた方がええよね。
わかりやすく興奮していらっしゃる。
はは、すごかろうすごかろう。
皆、俺の名を讃えおるわ。
でもさ。違うんよ。
あれから話に出た試作戦闘用車両をさ。
その後、10日もせずに仕上げてくるあの親方が一番ヤバいからな。
なんなのあの人。
頼むから寝てくれ。
改めて俺は自分の乗っていたその石作りの戦闘用車両一号機を見て、2日前に親方に呼び出されたことを思い出すのだった。
・
「出来たぞジル坊」
「なにがよ親方」
「ほれ、こういうヤツじゃろがい。お前が言うとった戦闘車両とかいうの」
「ふぁっ」
リアルでふぁっ、とか声上げたの初めてだわ。
なにこの石を直接切り出したようなゴツい見た目の、クッソかっこいい装甲車もどきは。
しかもその車体のボンネット中央に、こう、なんとも攻城兵器感が漂うクロスボウのお化けことバリスタさんが、前方視界にケンカ売りながらも、どでんと、乗っかってるとか。
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