タバサを救う道
わたしが学院の外に作った白の建物は、まだそのままの状態で建っていた。その白の建物は前回わたしがハルケギニアに来たときの人数に合わせて作っているので、今の人数では完全に手狭だ。
貴族を狭い部屋に押し込めるのは好ましくない。そのため、普段なら学院の食堂を借りる方向などを考えただろう。けれど、今はフェルディナンドが本調子ではない。だから、狭いけれども、わたしの守りの魔術で守られた白の建物を会議場所として選んだ。
「君は、領主の目の届かない場所なのをよいことに、勝手に白の建物を作ったのだな」
「養父様の許可を取りようがなかったのですもの。仕方がないと思いませんか?」
実はもう一か所、作っているということは内緒にして、わたしはハルケギニア組の中ではキュルケだけを連れて、フェルディナンドを会議室の中に通した。そして、ハルケギニアの魔法や常識などを伝えつつ、これまでわたしたちが行ってきたことをフェルディナンドに説明する。
「君は、他国に行っても相変わらず問題ばかり起こしていたのか……」
「あら、わたくしなりに自重したとは思いませんか?」
「私が求めるレベルは、その程度ではない」
いつもながらフェルディナンドは手厳しい。けれど、離れていた期間が長いからか、今はその手厳しさすら懐かしい。
「叱られているというのに、何をにやけているのだ」
「フェルディナンド様が変わらずにいてくださったのが嬉しいのです」
「変わらないな、君も」
「ローゼマインも、ちゃんとそういう顔ができたのね。心配して損したわ」
フェルディナンドと二人、改めて再会を喜び合っていると、不意にそんなキュルケの声が聞こえてきた。
「キュルケ、何かございましたか?」
「いいえ、こっちの話よ。気にしないで」
「そういえば、タバサはどうしているのですか? 現状を教えてくださいませ」
そう言って教えてもらえた内容によると、わたしがユルゲンシュミットに帰還した直後から、タバサは蜂起の準備を始めたらしい。そうして、地下陣地の設計書を作り、籠城戦に必要な物資を揃えると、旧オルレアン派の中でも確実に味方になってくれそうな貴族だけを誘ってガリア王ジョゼフに反旗を翻した。
けれど、タバサの元に集った兵は僅かに一千五百。対するジョゼフは短期間に四万もの兵を招集し、タバサを討つために出発させた。
兵力差は歴然。そして、タバサはなぜか城壁もない、ただの丘に兵を配置した。タバサの反乱は一瞬のうちに鎮圧させる。ハルケギニアの多くの人がそう思ったという。けれども、予想に反してタバサが討たれたという報は一向に入らない。逆に伝わってくるのは丘を攻めたガリア王軍が多くの死傷者を出したというものばかり。
蜂起から早三か月。この間、ガリア軍を撃退し続けているタバサ改めシャルロットの声望が俄に高まっているという。
しかし、今のところ明確にタバサに味方してジョゼフに反旗を翻した領主はいない。なんといっても、未だジョゼフの軍事力は絶大で、サガミールの丘の攻略には失敗したものの、敗戦したわけではないのが大きいのだという。
「それでは、タバサはどうなるのですか?」
「食料などは一年分は運び込んだから、これから九か月は持ちこたえられると思う。けれど、それで事態が好転するかはわからないわね」
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