リポート15
翌日。見滝原中央病院、上条の病室。
「ほらっ!動くっ!動くんだよ!夢みたいだ!」
放課後立ち寄ったさやかに、上条は興奮しつつ左手を開いたり握ったりを繰り返してみせた。
「そっかそっか。よかった……」
喜び絶頂の上条の姿に、さやかは唇を震わせる。
「ああもう!早くヴァイオリンが弾きたくてたまらないよ!」
「ふふふ!私も早く恭介のヴァイオリンが聴きたい、なっ……」
つうと、揺れるさやかの瞳から涙が零れ落ちた。
「う、くうぅ……。ご、ごめ……。でも、うううっ!」
様々な感情が胸に渦を巻く。溢れるいっぱいの想いをとどめることができず、さやかは泣き崩れてしまう。
「さやか……」
俯いて激しく感泣するさやかの頭を、上条は微笑みながらやさしく撫でた。
「さやか。本当に、本当にありがとう……」
「う、ううっー!うううっ……」
さやかの嗚咽が漏れる病室で、白いカーテンが静かに揺れる……。
*****
見滝原中央病院。屋上。
「さやかちゃん、大丈夫かな?」
まどかとおキヌは、はらはらとさやかを待つ。
「さやかちゃんが某著名心療治療師に直談判。本来行われるはずのなかった奇跡の心療治療が行われ、動かなかった腕が完全治癒という筋書きよ。よっぽどの唐変木でなければ恩に着るわよ。まあ実際、さやかちゃんの絡みがなければあんな危ない橋は渡らなかったわけだしね」
これまでの献身的な看病に加え奇跡的な腕の治癒への貢献。ここまで踏まえての告白だ。失敗しようがないだろう。
上条の腕が元に戻り、さやかとくっつく。こうなれば、さやかが奇跡を願うこともないだろう。
「髪が青くて幼馴染でもフラれるとかありえないって、俺のサイドエフェクトもいってますよ?ケッ!」
「実力派エリートぶってフラグ立てるとか、はっ倒すわよ……?」
イケメンがいい目をみることが面白い事ではないのだろう。悪態をつく横島を、美神は睨んだ。
がちゃり!
そして。重い扉が開かれさやかが現れる。眉をよせ唇を噛んでいる硬い表情だった。
「さやかちゃん?」
幼馴染の尋常でない様子に、まどかは目を見開く。
「……って、きた」
「え?」
「恭介に告られたけど、断って、きたっ!」
「えええっ!」
さやかの言葉に一同は仰天する!
「な、なんで……」
「……だってさ。恭介が好きになったのは『腕を治すのを助けてくれた娘』なんだよ。それって私じゃなくてもよくない?実際、私何もしてないし……。今の恭介は腕が治った幸せをぶつける相手が欲しいだけなんだよ」
「……!」
「私は恭介が好き。恭介のためならどんなことだってやる覚悟はあるんだよ?私と恭介の『好き』にこんなに差があって……。そんな告白、受ける事なんてできないよ……」
「さやかちゃん!」
涙ながらに告白をするさやかに、まどかとおキヌは涙を潤ませながら抱き着く!
「なん……だとっ??とりあえず好きな相手が告ってきたんだから、いいんでないの?」
横島はさやかの言葉に、目を瞬かせながら呆然としていた。
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