廃嫡されたい第一王子、布団に篭もる
光も差さぬ、その部屋で。
僅かな蝋燭の灯りを頼りに、気配すら無くその者たちは集まっていた。
彼らこそはこの王国の行く末を憂うもの――――。
「―――――それでは、第13回廃嫡作戦会議を始める」
「はい、ルーク様」
当の王子と、筆頭貴族である公爵令嬢、王国の影を担う精鋭二人であった。
「なんだね、フィリア君」
「はいちゃくって何ですか?」
「ざっくり言うと王様にする予定だったけどやっぱり止めるね、という感じだ。普通はこのあたりの国は長男が後を継ぐが、その長男に問題があるとか政争で負けた時とかに主に起きる」
「つまり、ルーク様がハイチャクされないようにするのですか?」
「いや、是非廃嫡されたい。なんか良いアイデアはあるか?」
「はいっ。起きたくないときは、おふとんにこもります。お部屋でごろごろしていれば後はつげないと思います!」
軟禁されてて令嬢、なにそれ美味しいの? な公爵令嬢が言うと嫌な説得力がある。
まあ彼女の場合、ヘタに出歩いて誰かにぶつかったら火傷させたり建物が融けるのでやむを得ない、と言わざるを得ないのだがそれはともかく。
「よし、採用!」
「わー」
「……主、では私もお供いたします」
「とりあえず必要な書類だけ集めてまいります」
「うん。関係各所に迷惑はかけないように――――俺は布団に引きこもるぞ!」
…………
………
…
―――――ドンドンドン。
『殿下―、そろそろ起きて下さい! というかお部屋にいらっしゃいます? また何処かに行かれてないですよね!?』
「俺は今日から布団から出ないことにした」
『……は? いえその、お仕事などは…?』
「弟に任せる! というわけで父上によろしく」
『いや、殿下!? 殿下ぁぁぁあ!?』
第一王子に相応しい、広く清潔な部屋。
そのほぼ中央にドカンと置かれた無駄に大きなベッド。その布団がこんもりと大きくなっている中で俺は羽ペンを握っていた。
「くっくっく、完璧なクズだな俺は」
「星よ。時なくまたたく光のごとく、かの者の機きをたすけよ――――戴月披星」
フィリアが手を掲げると、いい感じの灯りが布団の中を照らす。
ついでに修正箇所は赤っぽい光で照らされるオマケつきで。
「……!? なんで間違ってるところが照らし出されるんだ!? いや待て便利だうわなんだこれ仕事が捗る――――!」
全く原理は分からないが、星が道しるべになるとかそういう感じのニュアンスなのだろうか。便利だからいいけど。
「あ、書き損じた。時間戻して」
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