ハーメルン
栄光の影に隠れた涙
最終R ユメノトビラは誰が為に



 そのウマ娘には、夢があった。

 たくさんの観客が集まるステージで、最高のウイニングライブをするという夢が。

 
 たくさんのウマ娘たちが夢を追ってレースに挑み続け、数々の夢へと邁進する。

 中には、挫折や怪我で、志半ばでターフを去る者もいる。いや、数で言えば圧倒的に諦めてしまうことの方が多い。
 
 このウマ娘も、挫折を経験して、一度は夢を諦めかけた。もうレースには出れないと、そう思った。
 
 もう一度レースに出て、ウイニングライブに出ることなど、それこそ奇跡でもない限り不可能だと。



 






 しかし、誰かが言った。



 
 “奇跡は起きる。それを望み、奮起する者のために。必ず、きっと。”



























 『ウマ娘 プリティダービー 栄光の影に隠れた涙』  最終R ユメノトビラは誰が為に





























 



 有馬記念。
 年末の中山競バ場で行われるGⅠレース。

 今年を彩った数々のウマ娘たちが出走するこのレースは、言わずもがな、世間からの注目度が高い。
 立ち並ぶビルには数々の広告が映し出され、世間ではどのウマ娘が勝つかを口々に予想する。

 年末の浮ついた空気は、有馬記念を盛り上げるのに一役買っていたのだ。




 
 12月22日。

 寒空が広がるものの、気候には恵まれた中山競バ場。
 もう間もなく始まる有馬記念を前に、会場の熱気はまさに最高潮へと達していた。

 ウマ娘たちが観客にその姿を見せるパドック。
 そこに現れた一人のウマ娘の登場により、会場の興奮は更に押し上げられる。



 『さあ、お待たせしました!この有馬記念の大本命!メジロマックイーンです!』

 
 しなやかな銀髪をなびかせる少女が、身にまとっていたジャージの上着を脱ぎ捨てる。
 黒を基調にしたドレス姿のような勝負服が、彼女の高貴な雰囲気をより一層際立てていた。


 
 「マックイーン!!!」

 「マックイーン頼むぞ~!!!」

 「メジロマックイーンさーん!!」


 今日一番の大歓声が巻き起こる。
 その歓声を受けても全く動じることなく、マックイーンは片手を挙げて歓声にこたえて見せた。

 貫禄すら感じるその立ち振る舞い。
 一番人気に推した観客たちも、普段以上に凄みを感じるマックイーンの姿を見て、自分の判断は間違っていなかったとこの段階で感じたことだろう。

 
 『さあ1番人気のメジロマックイーン、普段と変わらず落ち着いているように見えますね!』

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