第4R 決戦!毎日王冠!
10月6日。
天気はあいにくの小雨で、曇り空があたりを支配している。
地面の芝が、雨に濡れて水滴を垂らしていた。
(雨……か)
クラスニーは、雨が好きではなかった。
というのも、レースはもちろんだが、勝った際に与えられるライブも、雨の場合客足があまりつかない。
ライブをやることも考えれば、やはりクラスニーは晴れが好きだった。
「クラスニー!!」
赤いジャージ姿に12番のゼッケンをつけたプレクラスニーに、観客席の最前列から声がかけられる。
クラスニーが振り向けば、そこにはカノープスの皆の姿があった。
「皆!」
「いけーー!クラスニー!大逃げだあ!!!」
「大丈夫ですプレクラスニーさん。私の立てたプランで行けば、まず負けることはないでしょう」
「あ、ありがとう。でもターボちゃん、私大逃げはできないかも……」
相も変わらず大逃げを推すツインターボと、眼鏡を片手で押し上げるイクノディクタス。
変わらないカノープスの面々に緊張が少しほぐれていく。
「クラスニー」
「ネイチャ……」
ネイチャが黙って、片手の拳をクラスニーの方へ突き出す。
「あんたなら、勝てるわよ。誰よりも練習したんでしょ」
「……!うん!」
レース場は相変わらず小雨が降り続いているが、カノープスの面々は傘すら差さずに最前列に陣取ってくれている。
カノープスメンバーの優しさが、クラスニーに勇気を与えてくれた。
「クラスニーさん。昨日も一応確認しましたが……レース展開はおそらく、ダイタクヘリオスさんが引っ張っていく展開になると思います。それはこの小雨でも変わりません。クラスニーさんはこのダイタクヘリオスさんについていく形……2番手の位置が一番好ましいですね。最後の直線で、一気に勝負をかけてください」
「うん。ありがとうございます、トレーナーさん」
ダイタクヘリオスは、逃げる戦法を使ってくる。
それは昨日のミーティングの時点でもわかっていたことだった。
昔、クラスニーがヘリオスとレースについて話したことがある。
『ごっちゃで走るのってマジありえなくなーい?だからウチはせんとーで走り切っちゃう方が好きなんだよね~』
『確かに、それができれば強いよね!それこそサイレンススズカさんみたいに!』
『それな!!スズカさん超イケてるよね!ウチもあんな走りしてみたいわ~!』
(ヘリちゃんは、きっと今日も逃げでくる……勝負は、最後の直線かな……)
ゲートまでの道を歩きながら、クラスニーは自分のレース展開をイメージしていた。
今日は負けられない。
今日勝たなければ、天皇賞への切符は掴めないだろう。
「クラスニー」
意識を集中し始めたころ、今度は観客席から、よく聞きなれた声がかけられる。
「……マックイーン!」
メジロマックイーンだった。
制服姿に優雅に傘を差した彼女が、観客席の最前列に立っていたのだ。
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