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呪術高専姉妹校交流会。例年通りであるならば、一日目は団体戦、二日目は個人戦となる。もっとも、今年は団体戦で襲撃があった為に一日の休みを置いて、二日目が開催される事となっていた。
「プレイボール!」
「なぜ、野球?」
左手を三角巾で首から吊ったままの雨里はベンチ席の端っこで首を傾げる。
事の発端は、目隠し着けた最強の一声からだった。
*
「―――――っつーわけでさ。人死にも出てるしどうする?続ける?交流会」
生徒たちを集めた場で、五条はそう切り出していた。
彼の持論ではあるが、教師が一方的に決めるよりも生徒たちの自主性に任せる為の今回の措置。
もっとも、関係ないかな、というような顔している者も居ない訳ではないのだが。
「加茂先輩、大丈夫なんですか?」
「ああ、問題ない。君の応急処置が良かったんだろう、家入さんの治療でほぼ完治したよ」
「なら、良いんですけど………頭の包帯は大丈夫ですか?目のあたりまで覆ってますけど」
「問題ない。寧ろ、私よりも君だろう。その左腕は折れているのかい?」
「折れてますね。綺麗に折れたらしいんで、反転術式で直ぐに治せるらしいんですけど………まあ、無理をした罰らしいです」
「それは、当然だろう。連絡手段が無かったとしても、君は一人で向かうべきじゃなかった。寧ろ、腕の一本で済んだことが奇跡だ。その幸運に感謝すると良い」
「そうですね」
階段の三段目辺りに立って壁に背を預けた雨里は頷く。交流会の二日目でも腕は治さないと家入に既に言われた彼は、個人戦は出ない。いや、術式的に戦えない訳ではないのだが、それでもやはり相手による。東堂などとぶつかれば、左腕を粉砕されかねない。
そんな彼を見下ろすのは、左目のあたりまで頭に包帯を巻いた加茂と若干不貞腐れたようにも見える西宮だ。
加茂の怪我も決して軽くはない。折れた両腕に、建物へと突っ込んだ際に頭を切った。今は、両腕は完治しているし、頭の傷もほとんど塞がっているが割と派手に血の流れる部位である部分も加味して包帯が巻かれていた。
一方で西宮が若干不機嫌なのは、自分のカワイイ判定を下した後輩が無茶して腕を一本折ってきたから。特級相手にこの程度で済み、尚且つ補助監督などを救出したことは褒めるべきであっても、それを飲み下せるかどうかは別の話という事。
それから、東堂が交流会の続行に肯定を告げ他の面々も大なり小なり頷いた。
個人戦のつもりであったのだ。それは両校の学長と生徒も共通認識だった。であるのに、どこぞの最強様の独断により内容変更。
そして、場面は冒頭へ。
*
術式の補助があれば出来る事の幅が広い雨里だが、今回は見学。元々、東京校の方がメンバーが多い為公平性を保つための措置でもあった。
東京校側は、ピッチャーが真希、キャッチャーは虎杖というフィジカルコンビが担当している。
先攻は京都校。一番バッターの西宮が出塁し、二番バッターは三輪。そして何故だかノリノリで審判をしている五条が二度目のプレイボールをかけていた。
「五条先生、ルールはっきりと理解してないよね、うん」
ダメだこりゃ、とつぶやく雨里だが彼だった別段野球に詳しい訳ではない。現に三輪が打ち上げフライとなり、その前に走っていた西宮がアウトになった様を見て首を傾げていた。
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