ハーメルン
【完結】デート・ア・ロスト~華恋アンリクワイテッド~
思わぬ再会

「……ここは?」

 士道が目を覚ますと、そこは不思議な空間だった。
 上も下もない、まるで浮いているかのような、しかししっかりと足をつける空間。
 紫色のもやにつつまれた不思議な、しかしどこか懐かしい世界。
 士道はそんな空間で目を覚ました。

「俺は、一体……」
「目を覚ました、士道?」
「え?」

 士道に背後から声がかけられる。
 声に士道が振り返ると、そこには少女がいた。
 ふわふわとした髪型で、優しそうな笑顔をたたえている少女。
 士道は、その少女を知っていた。

「凜、祢……?」

 そこにいたのは、園神凜祢。かつて士道の中で溢れかけていた霊力を放出するために命を賭した精霊の少女である。

「今度は、最初からちゃんと思い出してくれたね」
「そうね。今度も忘れてたらキツめの一撃を食らわせてたわ」
「まあ別に一撃は食らわせていいんじゃない? 最近気が抜けてだらしないしさぁ」
「これはこれは手厳しい。とは言え、士道も士道で罪な男なのもいけないね」
「おー、パパは罪な男」
「なっ……!? 万由里、鞠奈、蓮、凜緒まで……!」

 凜祢だけではない。他にも消えていった精霊達である万由里、或守鞠奈、蓮、凜緒がいたのだ。
 そこで、士道は気づく。

「もしかしてここは、現実じゃないのか……?」
「ふむ。有り体に言えばそうだね」

 それに答えたのは蓮だった。

「ここは言うならば士道の中さ。士道に封印された自分達の残滓が、こうして君の前にあらわれている、と言えば分かるかな」
「残滓……?」
「ええ、そうよ。始原の精霊である澪は消えたけれど、その力の派生である私達の残滓はあんたの中に残った。それが、別の世界の始原の精霊である華恋が現れたことによって影響されてこうしてあんたの前に現れることができた、ってとこかしらね」

 万由里がそう説明する。
 一方で、士道は再会を喜ぶ間もなく華恋の名を聞いて反応する。

「そうだ! 華恋! 華恋は……!」
「ちょっと落ち着きなさいよ」

 鞠奈が言う。
 少しツンツンとした口調だったが、その中身に悪意はなかった。

「あんたは今、ダメージを負いすぎて気を失ってるのよ。それにあいつは、元の世界に戻っていった。どちらにせよ、今のあんたにあいつを追いかける事は無理よ」
「そんな……」

 鞠奈からその言葉を聞くと士道は悔しげに拳を握り、歯を食いしばってうつむく。

「俺は、何もできなかった……! 何も……! 大切な友達が苦しんでいるのに、何一つ……!」
「士道……」

 辛そうに苦しがる士道に、凜祢は声をかける。
 だが、次に彼女が発した言葉は意外なものだった。

「まだ、終わりじゃないよ」
「えっ……!?」

 面を上げる士道。そんな彼を見て、凜祢は柔和な笑みを浮かべる。

「士道、考えてみて。華恋さんに当てられて私達の霊力が戻っているということは、それは他の精霊達の力も戻っているということなの」
「他の精霊の力……はっ、〈鏖殺公(サンダルフォン)〉……!」

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