ハーメルン
非科学的な犯罪事件を解決するために必要なものは何ですか?
犯罪事件に巻き込まれる確率は?
――――拝啓、この世界のどこかにいらっしゃるであろう神様へ。
人間生きて80年、長くとも100年の時代となりましたが、まだまだ神様が望むような形を私たちはきっと出来ていません。
神様が望むような高度な知性体系を、いまだ私たちは築くことはできていないのです。
それどころか、人は日々間違いを犯すものです。
私たちが試行錯誤を繰り返して、最善だと思った道を進んでいても、それが間違いだったなんてことも多々あります。
幾度となく繰り返される間違いを目の当たりにして、貴方様がお怒りになるのは当然ではあります。
それでも、仕方のない奴らだと、優しく許すのが貴方様の役目なのではないでしょうか。
優しく許すのが難しくとも、多少の痛みが伴う程度の罰を与える程度に収めるべきだと思うのです。
ましてや私なんて15年程度しか生きていない、小娘です。
いくら私がこれまでの人生で盛大にやらかしていたとしても、軽い天罰を与える程度で十分だと思うのです。
少なくとも……そう、少なくとも、命にかかわるような罰はあまりに重すぎると思うのです。
15歳の小娘に与えるべき罰はもっと他にある筈です。
……なんて、そこまで考えて、私はそっと目の前の悪夢が収まっていないかと瞼を開くが、そこにある光景は変わらない、大きな出刃包丁を持った男がバスの運転手を脅している後ろ姿だ。
――――だからこんな、学校へ向かう早朝のバスの中で、たまたま刃物を持った男が私の乗ったバスをジャックするなんてあんまりだと思うのです……。
……ばい、一般女子高生、佐取燐香の嘆きの言葉。
‐1‐
私は何の変哲もない家柄の両親のもとに生まれ、兄と妹に囲まれてすくすくと育った。
家はぎりぎり都会と呼べる範囲で暮らすのには不自由ない程度には裕福な家庭。
私自身は取り立てて挙げるような特技もなく、人に誇れるのはそれなりの進学校に通っていることくらいだ。
進学校内での成績も悪くなく、私生活もアルバイトを少しやるくらいで目立つようなことはしていない。
少し友達が少ないだけの、どこにでもいる高校入学したての女子高生。
それが私、佐取燐香(さとり りんか)だ。
大きな山もなく深い谷もないような日々の暮らしではあるが、それを嫌だと思うこともなく、何気ない日常に私はそれなりに満足していたのだ。
平日は学校に行って勉学に励み、仕事で夜遅い親に代わって家では家事を行う生活。
全部を親にやってもらえている人達と比べれば私自身苦労しているのだろうとは思うが、これはこれで楽しいものだ。
少し刺激が足りないと思う時だってあるが、そこはゲームなどで発散することで解消できる。
外で遊びまわるだけが幸せではなく、科学が進んだ現代社会では私の様な学生でも十分楽しめる機器が身近に存在するのだ。
まあ、つまるところ、私は現状に何一つ不満を持つことなく、十分幸せに生活を送っていたという訳である。
――――だから断じて、非現実的な場面に遭遇したいと思っていた訳ではない。
「おらっ!! お前ら動くんじゃねぇぞ!! 少しでも反抗的な動きを見つければ、一人二人は始末してやるからな!」
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