6.高専一年生 一日目・朝 ★挿絵有り
七海健人は毎朝余裕を持って準備をする。それは呪術高専に入学してからも変わらない。
早朝に起きて身支度を整えた後、寮のキッチンを借りて簡単なベーコンエッグを調理し、併設の食事スペースで焼いた食パンと共に食べる。食事のあとは荷物を持って早々に登校する予定だ。
「七海おはよう! 朝早いんだね」
「おはようございます」
朝から溌剌な調子で話しかけてきたのは昨日同級生として対面したばかりの灰原雄だ。制服まできっちり着込んでいる七海とは違いまだ部屋着でうろついている。
責めるべきは彼ではなく、単に七海が早いだけだ。
灰原は飲み物を取りに来たようだ。
「そう言えば今日はもう一人の同級生が来るんだよね。昨日が入学式なのに一日遅れてやってくるって、どんな子なんだろ」
「さあ。すぐにでも対面するでしょうし落ち着いて待ってみては?」
「女の子って聞いたけど、仲良くやってけるといいなー」
初対面の時、明るい灰原に七海は少し戸惑ったが七海の愛想のない返しも気にしない事は既に知っているので気負いなく返事する。確かに、もう一人もこれくらい楽な関係が築ければ良いだが。
「なに? 安藤の話?」
「あ、五条先輩おはようございます!!」
「おはようございます……」
「おはよーさん」
二人の会話に第三者が割り込んだ。いつの間に居たのか二人の先輩当たる五条だ。スカウトで入学した七海だが生来の真面目さもあって、事前にある程度高専の関係者や有力な呪術師は調べていた。
その情報においては、五条悟は現代の呪術界において最強の一角であるとされているらしい。
実の所、七海は初見からこの先輩に少し苦手意識を抱いている。
「安藤さんって今日入学する僕達のクラスメイトですよね!」
「そ、俺がスカウトして来たの」
「五条先輩が直々にですか? それは心強いですね!!」
「傑も一枚かんでるけどな。最強の俺達が推薦するんだ、アイツの実力は保証するぜ」
七海は五条の登場から感じ始めた嫌な予感に胸騒ぎがした。この先の会話は聞かない方が良い気がする。だが、無情にも灰原が核心に切り込んで行った。
「丁度七海と話してたんですけど、なんで入学式の次の日にやってくるのかなって」
五条悟は呪術師として高い能力を持ち、モデル顔負けの整った容姿とスラリとした高身長を持っている。
「ああ、それね」
御三家出身のエリートで、未成年ながら実質当主としての権威も持つ。
二物どころか三物も四物も与えられているようなこの男だが、
「俺が安藤に入学式は今日だって嘘ついた」
何処か肝心の物が欠落している印象を受けるのは決して気のせいではないはずだ。
「もうとっくにバレてるだろうけど」
男はカラカラと笑った。
◆
「まあまあ、どうせなら皆で安藤を迎えに行こうぜ!」
五条の一声で夏油と家入も集められ、何故か一年と二年の全員で新入生を迎えに行くという話になった。
普段はあまり関心を持たない家入も「クズどもが半年以上前からご執心の女の子がどんな子か興味ある」と言って同行した。
迎えに行くと言っても別に大したことではない。安藤は最寄り駅までは自力で辿り着いており、補助監督が運転する車でもうすぐ高専に到着するのだと言う。
[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/6
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク