ハーメルン
DESIGNED LIFE
第12話 一柳結梨の冒険

「結梨ちゃん。結梨ちゃんはメルクリウスのリリィと一緒に、基地に居る人たちを避難させてね。皆を守ることも大切な任務だよ。だから私たちと一緒じゃなくても頑張って。それからいつも言ってるけど、レアスキルは一つずつしか使っちゃ駄目だからね。絶対、絶対だよ?」










「りり……ゆゆ……」

 寝返りしながら名前を呼んで。
 暫くした後、結梨の意識がまどろみから抜けていく。
 ふかふかのベッドに清潔なシーツ。天井からぶら下がる装飾の豪華な照明。小綺麗で洒落た雰囲気の部屋で結梨は目を覚ました。

「そっか、お泊りしたんだった」

 きょろきょろと辺りを見回し、昨日の出来事を思い返して独り言ちた。

 あの日、梨璃の言い付け通り、結梨は横須賀基地の基地祭に集っていた民間人の避難支援に従事した。
 軍の輸送ヘリやトラックは勿論のこと、民間のバス等も利用して決行された脱出作戦。基地内の避難シェルターだけではとても収容しきれないための措置である。
 結梨は一時的にメルクリウスのリリィの指揮下に入り、避難者の搭乗場所で警護に当たっていた。度々スモール級のヒュージが飛んで来たが、どれも少数ずつでの襲来だったので問題なく撃墜できた。レアスキルを使うまでもなく。
 幾度となく避難車両を見送った後、結梨もメルクリウスの車両に便乗するよう言われて脱出に加わった。そうして到着したのがここ、ガーデン・メルクリウスの校舎というわけである。
 既に夕日が差し込む時刻だったため、宿舎の空き部屋に泊めてもらったのだ。

「んっ、しょっと……」

 回想もそこそこに、結梨は借りていた白色の寝巻から黒の百合ヶ丘制服へと着替える。顔を洗い、髪を最低限整えて、宿舎の出入り口を目指す。
 その途上、出入り口前のラウンジに、結梨をこのメルクリウスまで案内してくれたリリィが待っていた。

「ごきげんよう、一柳さん」
「ごきげんようルルディス」

 よく通る声で挨拶してきたのは青みがかったロングヘアの少女。海軍礼装を思わせる純白の制服を纏った、言うまでもなくメルクリウスのリリィである。

「昨日はお疲れ様でした。よくお休みになりましたか?」
「うん、昨日の晩御飯も美味しかったよ」
「そうですか。それは良かった」

 横須賀基地の戦闘で結梨が加わったのは彼女、ルルディス・ブロムシュテットのレギオンだった。民間人から死者が出なかったのは彼女らの働きによるところが大きい。守るための戦いに長けている点は、メルクリウスが『最高のガーデン』と称される()()()だろう。

「それで一柳さん、今日これからのことなのですが。朝食をとられた後、すぐに原隊へ復帰されるおつもりですか?」
「うん、早く帰らないと」
「もう少し待ってもらえたらメルクリウスから車を手配できるのですが……」

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